台湾ボイスの皆様、こんにちは、林建良でございます。独裁国家と聞いておそらく皆さんは、一般の人間は自由がなく、怖がりながら生活しているというイメージをすると思いますが、実際はそうでもありません。今の日本の方々は独裁政権を経験していません。かつて台湾で独裁政権を経験してきた人間として、独裁政権には1つの特色があることが分かります。基本的には政治のことさえ触れなければ、ある程度の自由があります。今の中国もそうですけれども、中国の知識人と話すと、中国は言論の自由がない、結社の自由もない、何をやっても政府の管理が物凄く厳しくて息がつまりそうと、知識人ほどそういうふうに言います。しかし一般庶民と話をすると、まあ別にそうでもないですよと言ったりするんです。本音は言えないという部分もあるかもしれないけれども、それも含めてもある程度の自由があります。ですから、一般の庶民が別に政治に関わっているわけではないですが、あまり独裁政権というイメージはないです。特に江沢民時代、あるいは胡錦濤時代は、ある程度の自由があったわけです。しかし、習近平時代になってから、独裁政権を忘れないように、いろいろ政策を変えたりするわけです。
一番有名な例としては城管というシステムの導入です。城管とは、城市管理執法の略称です。城市とは都会という意味で、つまり都会の秩序を管理する人間。秩序を管理してくれる人間はあった方がいいじゃないかと思われるかもしれませんけれども、実はこの城管という存在は、どういうものでしょうか。普通は日本で言えば治安維持、もしくは秩序維持が必要とする場合は警察が管理します。正常な国家はそうですが、しかし中国の場合、警察以外に城管があります。しかも執法機関です。法律を執り行なう存在ですけれども、彼らの仕事は何か。彼らの仕事は都会の秩序を維持することです。秩序といえばちょっと大雑把ですが、一番の仕事は露天商の取り締まりです。あるいは屋台の取り締まり。中国の都会では基本的に露天商は許されません。一体どういう人間が露店で物を売ったりするか。基本的には底辺の人間です。力のある人間であれば、店を構えて物を売ったりすればいいですから。しかし店を構える資金もない場合、露店で物を売ったりします。しかも彼らがその露店で売るもので一番多いのは農村地から自分の畑で作っている野菜とかです。できたものを都会に持っていって、そういうところで売るということです。城管がこういう人たちを取り締まります。非常に乱暴な方法で、です。売っている野菜や果物とかを没収したり、殴ったり蹴ったりするわけです。まさに、制服を着ている強盗のような感じです。だから城管といえば、都市の強盗と言ってもいいです。しかも、没収してきたものを自分のところに持って帰るわけです。まさに強盗です。しかも、それだけではなく罰金もできるし、場合によっては拘束することもできます。非常に権限が大きいわけです。ですから彼らは、都会でいたるところをパトロールしているわけです。嫌でも目に入るわけです。中国はそれさえなければ、自由に見えます。彼らが秩序を維持するという大義名分でやっていることは、実は貧しい農民からの略奪です。2017年、つまり習近平政権から城管という制度が導入されました。それ以前にもそういうものはある意味でありましたが、警察の補助という形に過ぎなかったんです。これは中国の建国以来、1950年代からこういう警察の補佐という人間が存在しますが、正式に導入したのは2017年です。
しかしこれの農村版が最近できました。農村版というのは、城市、都会と言えば城管、農村だから農管というふうに言われているわけです。正式な名前は、農業総合行政執法です。いわば農業警察です。この農業警察は、実は1年ぐらい前から試験的に運用されてきました。中国では農業農村部、日本で言えば農林水産省のような存在です。農業農村部が初めて認めたのは、2023年の4月14日です。農管とはつまり城管の農村版です。城管の農村版ですけれど、農村は広いし、あまり人目につかないところがいっぱいあるわけです。だから城管よりもやりたい放題でやっているわけです。ですから彼らは、制服を着た農村の強盗、免許のある強盗と言った方が正しいかもしれません。しかしもちろん中国は、制服を着た強盗を運用するぞと言うはずもありません。農管、農業総合行政執法という制度は、何で投入されたのか。中国の農業農村部の発表によると主に目的は3点ありあます。1点目は農業指導です。2点目は、農産品の安全指導です。3点目が農村の環境管理、環境指導です。
では農業指導とは何か。農作業をやる場合には農民証、つまり免許が必要です。田んぼの仕事をやるのに、お米を植えるのに、野菜を作るのに、そういった免許、資格が必要です。医者と一緒です。医者になるために医師免許が必要でしょう。農民になるために農民免許が必要です。ところがこの農民証を誰が発行するかというと、農管が発行するんです。農管という人間はどういう人間かというと、農業を一生懸命勉強してきた人間、農業の訓練を受けてきた人間とかではありません。つまり一般募集して、大体20代、30代ぐらいの若者が仕事もなく、農管にでもなろうかということで農管になるわけです。つまり農業の知識が基本的にほとんどない人間が農業指導をするわけです。実際の例としては、何十年も農業をやってきた人間、何十年もお米を作ってきた人間が、ある日、今度これから農作業でもやろうかといっても禁止。お前、農民証を持っているのかということです。農民証を持っていなければ農民証を取らなければいけない、農民証を取るために試験が必要です。医師免許の国家試験みたいなものです。試験が、何十年も農作業をやってきて農民になるための試験で落っこちたりする例が物凄く多いわけです。農作業ができるのと試験に受かるのとは実は別問題です。だから何十年も農民の経験がある人間は、結局、農民をできるその資格がないわけです。資格がない場合、中国ではどのようにするか。中国は非常に頭がいいわけですから、受からなければ、金で買う。あるいは、もっとたくさん金を絞り出そうとする。例えば、免許の試験に落ちたら受かるように教えてあげます。教えるのももちろんタダではありません。自動車運転の教習所みたいに通います。では誰がそれを経営するか。もちろん農管が経営するに決まっています。試験の問題集を知っている人間が経営するんです。そのためにお金を払って、勉強をして、また試験を受けて、また受からない場合は、袖の下を渡したりするんです。これだけでもかなりの利益になるわけです。だから、農民が農作業できないように、素人がプロを指導するような状態にしているわけです。
では農産品の安全指導はどのようするのでしょう。例えばトラクターやコンバインを運転するにも実は免許が必要です。日本では、田植え機やトラクターは、公道で運転しなければ免許は不要です。普通に誰でも乗れるわけです。勉強した方がいいですけれど、大体親、あるいは誰かから教えてもらって、すぐに乗れるようになります。わざわざその免許を取らなければいけないということはありません。しかし今度は、安全指導のためにそれも免許がないとだめです。トラクターに乗るための免許が必要、コンバインに乗るための免許が必要、田植機に乗るための免許が必要ということです。それ以外に、ニセ種、あるいはニセ農薬の取り締まりとかをする。確かに中国はニセの種とニセの農薬はいっぱいあります。こういうのは事実です。中国では、流行っている中国のニセ種とニセ農薬を皮肉るこういう小話があります。ある農家の人間が高いけれども買ったら必ず豊作になると言われ、全ての貯金をはたいて種子を買う。植えてみたら、全く芽が出ない。つまり、ニセ種を買ったわけです。ニセ種を買って、自分の貯金を全部使い果たし、生きる気力もなくなったといって、家にある農薬を丸ごと1本飲んでもう自殺しようとしたけれども、結局飲んだ農薬はニセ農薬です。ニセ農薬を飲んでも全く効かないものですから、当然死にません。家族は、「よかった、よかった。死ななかった。生き返った」とお祝いしようと、酒を買ってきます。そのお酒はニセ酒で、飲んで死んでしまいました。このような小話が中国では流行っています。だけれども、ニセ種とかニセ農薬を取り締まるために、農管は必要ないんじゃないですか?管理するのは製造元とか犯罪元とかを取り締まればいいのに、農民、使用者、消費者を対象にニセ農薬とニセ種を取り締まるという必要はないんじゃないんですか。彼らだって被害者です。ですから取り締まるのは国の大本で、政策でやればいいんです。
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