日経の反台湾印象操作「台湾、知られざる素顔」を斬る③

台湾

日経新聞の「迫真 台湾、知られざる素顔」というシリーズの3回目は1回目、2回目と比べれば、ちょっと腕が上がっているような感じです。どの部分で腕が上がっているかというと、1回目と2回目は常識のある人間から見れば、嘘だとだいたい分かる。まあこれは偏向かな?ということで、わざと捻じ曲げているかな?と判断できると思います。しかし3回目は、恐らく台湾ボイスの皆様なら、見ればすぐにこれは間違っていると分かりますけれども、しかし一般の人間はなかなか分かりづらいです。その意味で、3回目では見習いペテン師からもう一段腕が上がったように見えるわけです。しかしこの見出しは1回目と同じように品がないですね。どのような見出しかというと、「政治の理想で飯食えない」。これは物凄く貧しい国が言うなら分かります。物凄く豊かになって、1人1人の所得がドルベースであれば既に日本を抜いている台湾であれば、「政治の理想で飯食えない」という言い方は実は極めて下品です。この3回目は4つの部分から構成されています。この連載は4回でもう終わっています。終わってから、日経の台北支局長の中村裕支局長と龍元秀明記者ですね。これはもう分かっているんです。

この4つの部分とは何か。1番最初の部分は、台湾人は金のために会社を裏切る。あるいは1回目の連載の時と同じように、台湾人は金のために国を売るというのと同じような印象付けです。2つ目は、台湾は中国に物凄く依存している。中国なしでは生きていけないという印象付けです。3番目の印象付けはアメリカは信用できない。これはもう明らかにアメリカ懐疑論です。これは現在、中国が台湾で今やっている認知作戦と全く同じスタンスです。4つ目の部分は、台湾の経済はもう危ない、TSMCはもう危ないという結論付けです。この4つの部分を一番最初から見てみると、一番最初は仮名、偽の名前で誰か1人が語っていることを引用して、それをあたかも真実であるかのように誘導してきます。この人は何を言っているというと、『中国半導体大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)だって、台湾が一から育てた。中台は元々、ズブズブの関係だ』と。これは一部は事実なんです。SMICを作ったのは確かにTSMCの一部の人間が作ったんです。この人はどういう人間かというと、かつて12年間勤めた台湾人50代男性、徐進哲(仮名)。どこに務めたかというとSMICで12年間勤めた。今50代です。つまりその時は30代か40代前半ぐらいです。今50代ならまだやってもいいんじゃないかと思います。まあ、1回目の連載に登場したあの人と同じように、やっぱり捨てられちゃったんです。元々の自分の会社を裏切って中国へ行ったけれども、つまり裏切り者です。この人もやっぱり人間のクズです。自分のところを裏切ってよそのところへ行く人間は、よそで信頼されるか。自分の祖国を裏切って敵の陣営に入った人間は敵の陣営に信用されるか。普通なら信用されません。徐進哲は、『2000年のSMIC創業直後「TSMC(台湾積体電路製造)の約300人の同僚技術者とSMICに移り、軌道に乗せた」。』つまり彼がもともとTSMCで勤めていた300人の中の1人です。300人の中の1人として、中国に移ったわけです。

そしてこれも徐の話です。『「上場前にその会社の株がもらえると聞き、すぐに中国に渡った」(徐)』つまり徐進哲です。この人は株をもらえる、つまり金をもらえるということですね。金もらえると思ってすぐに渡ったような人間の話を、一番最初に取り上げて、あたかも台湾のビジネスマンの代表であるかのように紹介するんです。まるでTSMCが協力してこのSMICを作ったかのような書き方ですね。これはもう印象誘導です。しかしTSMCは実は被害者です。TSMCは2003年の11月19日に、アメリカのカリフォルニアで訴訟を起こしました。つまりSMICを訴えました。SMICを訴えた理由は、「SMICは不当な手法によってTSMCの技術を盗んだ」ということです。どのような不当な方法かというと、SMICはTSMCから100名以上の人間を誘致してかつてTSMCで勤めた技術者から強制的に技術供与を要求したということです。つまり中国に渡った100名の台湾人は金のためにTSMCを中国に売ったということです。そこで勤めただけではなくて、元々渡してはいけない特許のある知的財産も一緒に渡したということです。渡してしまったら、もう自由がありません。自由がないということは、持っている技術を出さなければクビを切るということです。ですから当時は確かに300人くらい渡りました。それによってSMICが出来たんです。SMICのトップの人間も実はTSMCから入りました。しかしその後はほとんどの人間が出ました。あるいはクビを切られました。中国ってそういう国なんです。自分でできればもう用済みです。この徐進哲という仮名の人間も、恐らくもう用済みということですね。捨てられちゃったんだと思います。

そしてここにまたこう書いてあります。『中国にはこうした「台商」と呼ぶ台湾人ビジネスパーソンが今なお80万人規模で暮らす。』台商=台湾商人です。台商というのは、今の台湾では極めてイメージが悪い。金のために国を売る人間ですから。あるいは金のために敵に協力するような人間ですから。台商というのは決していいイメージではありません。最初からいいイメージではない。今の中国でもいいイメージではなくなっています。中国でもやっぱり台商といえば軽蔑される対象です。しかし、『今なお80万人規模で暮らす。』中国にいる。これは事実です。つまり出るに出られない。あるいは台湾に帰る面目がないという人間は未だに確かに80万人、家族も含めての話ですけれども、中国にいます。『改革開放後、いち早く小さな台湾を飛び出し、中国にモノ作りを教え、鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)など、巨万の富を築いた台商は数知れない。』もうまるで中国に行った台湾商人はみんな巨万の富を築いたんだという言い方です。実はですね、この記事見出しの「政治の理想で飯食えない」という言葉は、郭台銘が2014年5月8日に言った言葉です。ちょうどひまわり運動が台湾で起こったその直後です。その時に彼は何を言ったかというと、「民主主義で飯は食えない」。「民主主義はGDPに貢献しない」。つまり、民主主義は経済に全然貢献しないと彼は言ったわけです。さすがに日経は「民主主義で飯食えない」という見出しは出せないと思うんですけれども、これを「政治の理想」に変えたんだと思います。このことも誰が言ったかというと、台湾大手首脳。『「政治の理想で飯は食えない」(台湾大手首脳)』台湾大手首脳というのは郭台銘です。「民主主義で飯食えない」ということで。これは、一握りの独裁者に擦り寄る、独裁者の権力によって自分の懐が潤う、特権を得る一握りの人間であれば、それはそうです。もし民主主義で飯を食えないのであれば、民主主義の国はみんな貧乏です。ところが今世界中の豊かな国は民主主義の国です。北欧にしても、日本にしても、アメリカにしても、台湾にしてもそうです。逆に独裁国は、中国は人口が多いですからGDPは世界で2番目ですけれども、一般の人民は果たして豊かになっているのか。農村地に行ってみれば分かります。李克強がかつて5年前にこう言ったんです。「中国では月々の収入が1000人民元以下の人間が6億人もいるんだ」と。5年前の全人代で言ったんです。1000人民元とは日本円にすればどれくらいか。16000円ですね。月々の収入が16000円以下の人間が6億人もいると言ったんです。当然民主主義の方が豊かになるんですけれども、しかし日経は「政治の理想」とは自分で変えた言葉なんですけれども、民主主義で飯が食えないと言いたかったんです。そしてその後は、台商がいかに大切、あるいは中国がいかに大切、そして蔡英文総統の言葉を捻じ曲げて、わざと誤った解釈をして、日本の読者に紹介する。この部分が非常に悪質です。ジャーナリストは、自分の都合によって、いろいろな情報があるので、その情報をわざと台湾にとって悪い情報、でもこの情報そのものは真実であれば、それはしょうがありません。わざと悪い情報を集めて印象操作をする。それならまだ許せる範囲です。しかし、元々の情報を別の解釈をする、事実を伝えないで自分で加工する。自分で加工するジャーナリストは、もはやジャーナリストとは言えません。製造業です。ニュースを作っている。

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