習近平の不安

台湾

台湾ボイスの皆様、こんにちは、林建良でございます。習近平は、国家主席の3期目の任期になってから、全て自分の側近で権力の中枢を固めています。そしてほぼ全国の隅々まで、監視体制を非常にしっかりと築いてきているのです。誰が見ても習近平の権力基盤は盤石です。つまり彼にとっては、基本的には不安材料はないはずですよね。外部では、アメリカとはいろいろないざこざがありますけれども、しかし外国に侵略されるという心配も基本的にはありません。どの国も中国を攻め込むということは基本的にはないわけです。だから、ある意味で非常に安泰の状態で、まあ不安材料のない状態で自信満々でいいはずなのに、しかし、実はそうでもないみたいです。そうではないという証拠はどこにあるか。実は5月30日に中国では中央国家安全委員会の第1回の会議が開かれたわけです。その第1回の会議の中で、習近平は実は2つのことをものすごく強調したんです。1つはどういうことかというと、「我々は底線思維と極限思維を堅持しなければいけない」と言ったわけです。もう1つは、「これから国はさらなる荒波の中に突入する。それに対して準備せよ」ということです。まるでもうすぐ戦争にも突入するとか、あるいはものすごく大きな災難でもやってくるかのような言い方です。

では、この2つの言葉、底線思維と極限思維とは何を意味しているのか。底線思維は、習近平政権になってからしょっちゅう使われます。しかし、極限思維というのはこの会議で使われたもので、今までほとんど使われていませんでした。底線思維は基本的にはBottom-line thinkingという言葉通りで、思維とは思考という意味です。中国語では思考を思維ということがあります。Bottom-line thinkingとは「常に最悪の状態を考えて行動せよ」ということです。備えあれば憂いなしという言葉がありますが、しかし、全てのことにおいて、常に最悪の状態を想定するのであれば、常に神経がピリピリしている状態で結構疲れます。しかし習近平はこのようなことを下の人間に強制するわけです。では極限思維とは何か。英語にすれば、whatever the cost。つまり、どんな手を使ってでもということ。切羽詰まっているような感じです。要は今の国家安全に関して最悪の状態を想定しながら、どんな手でも使って国家安全を守るということです。習近平が言っている「国家安全」とは本当に中国全体の国家安全なのか。それは違います。習近平の言っている「国家安全」というのは、「俺の安全」です。「俺の安全のために最悪の状況を想定しよう」「俺の安全のためならどんな手でも使っていい」ということです。極端に言えば、俺の安全のために戦争を発動してもいいと、殺人兵器を使ってもいいということです。どんな手でも使っていいということ。習近平はいつも自信満々のように見えます。この間の中央アジアの5か国のサミットでも皇帝様のようでした。恐らく「敵なし」という感じです。少なくとも中国の中では敵なしという感じです。だからこの会議の後、日本のマスコミでは「これは恐らくアメリカとの衝突を準備せよという意味ではないか」という評論も、見られました。しかし、答えはこの会議の中にあります。そうじゃないんです。実は習近平が恐れている対象は、国外ではなくて国内です。台湾ボイスで何度も言っていますが、中国共産党にとっての最大の敵は外部ではなくて内部です。一番恐れている存在とは自分の民です。自国の人民です。だから、中国人民解放軍という名前があるのです。中国の人民を解放する軍です。人民を解放すると言葉としてはそういうふうに言っていますが、実は人民を鎮圧する、人民を殺すための軍隊です。その中国共産党の軍隊の敵というのは、外国ではなくて、実は内部です。

今回この会議でも実は習近平は5つの指示を出しました。この5つの指示を見れば分かりますが、明らかに彼の恐れている対象とは内部です。彼がどんな指示を出したかというと、この5点です。1点目は政治安全。政治安全を確実にしろということです。政治安全というのは、日本では聞き慣れない言葉ですけども、政治安全とは、軍事クーデターがあってはいけないと、内部で反乱があってはいけないということです。穏やかな言葉ではありません。しかし彼がはっきりとこういう指示を出しているということは、つまり、中国共産党の内部では安泰ではないです。不穏な動きがあると。決して自分が全て把握できているわけではない。だから、彼は不安でしようがないのです。

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