秦剛解任の裏

台湾

台湾ボイスの皆様こんにちは。林建良でございます。世界中の中国ウォッチャーにとって、この7月になってからの一番の関心事は、おそらく中国の外交部長である秦剛氏の状況です。ようやくその一部が7月25日に明らかになりました。具体的には、中国の全人代の常務委員会が開催されたことです。この常務委員会の開催は異例であり、通常は2カ月に1回行われますが、前回は6月に開催され、次回は予定されていた8月ではなく、急に7月25日に開催されることとなりました。さらに異例なことに、開催が1日前になって公表されたのです。通常はもう少し前の1週間前には公表されるのが一般的です。開催結果として、実際に2件の人事が発表されました。1つは外交部長の解任と新任です。もう1つは人民銀行の総裁の解任と新任ですが、後者は予定通りの変更であり、特にニュースとはされません。大きなニュースとなったのは、実は外交部長の解任です。具体的には、秦剛氏の解任です。そして、新たに任命されたのは、元外交部長であり、すでに9年間も在任していた王毅氏です。彼は昨年の12月30日に外交部長を退任し、現在は党の外事工作委員会の弁公室の主任として活動しています。つまり、彼は行政の職から離れ、主に党の職務に専念していると言えますが、実際には外交政策の責任者としての役割を果たしています。

中国の外交というのは二本立てで運営されています。具体的には、外交政策の責任者は党内にあります。この責任者は、党の外事工作委員会の弁公室主任であり、現在は王毅氏が務めています。彼の前任者は楊潔篪氏でした。現在、王毅氏は外交部長のポジションを離れ、一段上の役職に就いたということです。一方、外交の実行役は誰かというと、それが外交部長です。したがって、このような二つのレベルが存在することが中国の外交の特徴です。通常、外交部長は一段上の役職に昇進し、さらに王毅氏は現在69歳で、もうすぐ70歳になります。中国では通常、68歳までは再任できますが、68歳を超えると引退となります。しかし、王毅氏は既に69歳で、もうすぐ70歳になるにも関わらず、任命されるということ自体が異例です。

今回の外交部長の解任と任命が世界のトップニュースになった理由は、中国外交部の異変が前回の台湾ボイスでも紹介されたことからも分かります。この人事が尋常ではないとされる要因は、少なくとも以下の5つの点にあります。まず、尋常ではない部分とは、秦剛氏の昇進自体です。彼が不審な点に関しては、彼が外交部長になる前に駐米大使になったということです。従来、中国の駐米大使は必ずアメリカの中国大使館で駐在経験のある人物が将来的に大使になるのが一般的でした。しかし、秦剛氏にはヨーロッパでの経験しかありません。秦剛氏はアメリカの中国大使館に駐在した経験がありません。つまり、秦剛氏はアメリカの事情を把握していないと言えます。短期間の滞在ではアメリカの事情は理解できないのです。実際、それを理解するためには現地での仕事を経験しなければなりませんが、しかし、秦剛氏は実質的に中国の外交官のために、駐米大使という非常に重要なポジションに、56歳と非常に若い年齢で就任しました。しかしながら、彼が駐米大使を務めた期間はわずか1年数か月でした。通常、アメリカの経験のない人物であれば、大使になり、時間をかけて人脈を築くことも考えられます。それには数年、3年から5年、場合によってはもっと長い期間、アメリカに滞在し、アメリカの人脈を構築し、アメリカの事情により理解を深める必要があります。1年数か月の期間は明らかに箔付けと言えます。これは将来の外交部長になるための準備期間でした。

したがって、2番目に異例な点としては、彼が57歳で外交部長に就任したことが挙げられます。具体的には、彼は2022年12月30日に外交部長に任命され、これは異例なケースでした。さらに、3番目の異例な点は、彼が外交部長になってわずか3か月後に国務委員に任命されたことです。国務委員と外交部長の違いは、彼が国務委員としても外交部長の職務を兼任していることです。ただし、国務委員は国家の指導者の一員であり、中国には5人の国務委員がいます。国務委員は副総理と同格であり、国家の指導者の役割を果たします。一方、彼の前任者である王毅は、外交部長に就任してから5年後に国務委員に任命されました。したがって、彼がわずか3か月で国務委員に昇進したことは異例中の異例です。4番目の異例な点は、わずか7か月の在任期間で彼が解任されたことです。これは、中国の外交部長としては史上最短の在任期間です。最後に、彼の後任である王毅が、彼の前任でもあり、外事工作委員会の弁公室主任も兼任したことが5番目の異例な点です。前述した通り、中国の外交は二本立ての体制で運営されており、政策の制定者と政策の執行者が別々の人物でしたが、今回は両方の役割を同じ人物が務めることとなりました。彼にとっては好都合なことですが、王毅にとっては権力が強まったことを意味します。しかしながら、中国の外交はこれまでいくつかのルールや慣例が存在し、前例を重視していましたが、これらをすべて無視するのは誰の決定なのでしょうか?それは秦剛個人ではありません。それは習近平国家主席です。彼がこのようなスピードで昇進することができたのは、習近平の支持があったからであり、彼自身の能力によるものではありません。習近平は独裁者であるため、前例や法律を無視し、彼自身が最も信頼している秦剛を抜擢したのです。

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