対米外交の大きな前進となる蔡英文・マッカーシー会談

台湾

台湾ボイスの皆様こんにちは。林建良でございます。実は外交と国防とはその国を守る両輪のような存在です。ある意味で外交というのは銃を持たない国防、国防とは銃を持つ外交と言ってもいいです。外交も国防も国を守ることについて非常に重要なことです。しかし残念ながら台湾は国交国は非常に少なく、今は13か国しかありません。だから本当の外交はなかなかできません。民間外交とか実質外交とか、そういう言葉はありますが、実はそれには限界があります。例えば台湾の現職の総統は日本に入国できません。日本の首相も台湾に行けません。つまり台湾と日本では、国の指導者同士で全然話し合えないわけです。日本と台湾では民間外交があるんじゃないか、実質外交があるんじゃないかと言われていますが、例えば軍事協力などの非常に重要な部分は全くできないわけです。今唯一、台湾の現職の指導者が入れる外交関係のない国はたった1か国です。それはアメリカです。それでも正式に訪問するというわけではなく、いわゆるトランジット外交です。トランジット外交とは実際は別のところに行くけれども、途中の経由地としてアメリカに立ち寄るということです。アメリカに立ち寄ることによって、自らの存在感を示したり、アメリカ国内で人と会ったりするわけです。ある意味で、これは非常に屈辱的な外交です。人間で言えば、ある家を訪ねたい。しかし家の主人は、「いやいや来ないで」ということです。でももし隣の家に行くんだったら、ちょっとだけなら寄ってもいいよと。来てもいい、ということなんです。つまり「来てください」ということではありません。台湾の指導者にとってはかなり屈辱的なものです。このトランジット外交を始めたのは実は李登輝です。しかし当時のトランジット外交はこうです。例えばアメリカに立ち寄るとします。その際に、最初は空港から出てはいけない。あるいはだんだん緩めて、今度はホテルから出てはいけない。今度はホテルから出てもいいけれども、人と会ってはいけない。公開の場でしゃべってはいけない。いろんな制限があります。

今回の蔡英文総統も実は中米訪問ですけれども、途中でアメリカに立ち寄るという形のトランジット外交です。蔡英文総統は3月29日に出発し、3月30日にニューヨークに入りました。ニューヨークでハドソン研究所から賞をもらい、実際には受賞講演も公開でやる予定でしたが、結果的にはその公開の場での受賞講演もできなくなりました。非公開の講演になりました。ニューヨークでのトランジットは非常にトーンを低くした。それはもちろんバイデン政権の意向によるものだと思います。それから中米のグアテマラとベリーズに行き、帰りにカリフォルニアのロサンジェルスに寄りました。しかしカリフォルニアに寄ったそのトランジットは、それこそ今回の外遊のクライマックスになったわけです。なぜかというと、カリフォルニアで蔡英文総統とケビン・マッカーシー、アメリカの下院議長が会いました。実はケビン・マッカーシーと会うのはずっと前から決まっていたんですけれども、今回の場合は直前まで本当に会うか会わないか分からなかったんです。実際ここで会談する2日前の4月2日に、ケビン・マッカーシーのオフィスがいつ、何時、どこで蔡英文総統と会うかを公表し、取材に来てもいいよということになりました。それまでは蔡英文総統とケビン・マッカーシーが会えるのかどうかは曖昧でした。おそらくその時はバイデン政権の圧力、その背後の中国からの圧力があったのでしょう。

しかし今回のケビン・マッカーシー下院議長と蔡英文総統との会談は物凄く良かったんです。まずこの会談のインパクトがどれくらいあるかは中国の反応を見れば分かります。中国大使館は、なんとケビン・マッカーシー一行、全部で19名の下院議員ですけれども、みんなにEメールを出して、恫喝したんです。会いに行くな、と。会いに行ったらどんな結果になるか分からないぞということで。まあヤクザのような内容でメールを国会議員に出したわけです。さらにロサンジェルスの中国領事館はなんと1人当たり400ドルを出し、ロサンジェルス近辺の中国人を動員して、会う予定になっているレーガン大統領記念図書館の周辺でかなりのデモを行いました。つまり嫌がらせです。しかし蔡英文総統は4月5日の午前10時、時間通りにケビン・マッカーシーと会いました。会ったときの様子はテレビで公開されていますが、ケビン・マッカーシー一行はみんな外に出て蔡英文総統を出迎えたわけです。これはかなり丁重な扱いです。しかも実際の会談の前に全部マスコミに公開しています。何と世界からマスコミが来ていて、全部で160社にも上ります。だから今回の会談は物凄く注目されているわけです。その会談の時間は全部で約2時間です。通訳なしで丸々2時間、蔡英文総統も英語で会談しているわけです。その会談の後に2人の共同記者会見をしました。レーガン大統領の大統領専用機、エアフォース・ワンの前で2人で記者会見をやったわけです。記者会見の後はケビン・マッカーシー下院議長と一緒に参加したすべての国会議員が独自に記者会見をしました。その日のうちにケビン・マッカーシー下院議長は蔡英文総統と会ったということを6回もツイッターで発信しました。よっぽど興奮し嬉しかったんでしょう。

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