中国外交部の異変

台湾

台湾ボイスの皆様こんにちは、林建良でございます。現在、中国の外交を巡る最も注目されている話題は、外交部長の不在です。つまり、外交のトップが不在ということで、この件に関しては世界の主要メディアが報じています。例えば、イギリスのタイムズやフィナンシャルタイムズ、アメリカのニューヨークタイムズやCNNなどが報道しており、皆が関心を持っています。それは当然のことです。一国の外交の責任者がいないということは、この国内で何かしらの事態が起きた可能性があることを意味していますが、具体的に何が起きたのかはわかりません。中国の外交部の説明によれば、7月11日に秦剛外交部長が記者会見で、健康上の問題によりしばらくの間仕事ができないと発表されました。そのため、インドネシアで行われるASEAN外相会議には、王毅氏が代理で出席することになりました。王毅氏は元外交部長で、現在は中国共産党の外事部の主任を務めています。しかし、ここでも問題があります。本来ならば、副部長が出席するべきである国家としての外交部長の代理となるべきですが、王毅氏が出席することになったのは矛盾しています。

しかし、この点においても、王毅氏が出席するという状況は疑問です。また、外交部長が6月25日から公の場に姿を見せていなかったことも注目に値します。具体的に何が起きたのでしょうか。しかし、7月14日の記者会見で、フランスの記者がこの件について質問しました。「秦剛氏はいつ復職される予定ですか?」と。この時、中国外交部の報道官、王文斌氏は非常に興味深い反応を示しました。何度も質問がされても、黙っていて、手に持っているノートをめくって答えを探しているかのような仕草をしました。彼は16秒間も黙ったままで、そして最終的には「それについては答えられません」と答えました。「次の質問に進んでください」と言ったのですが、実際にはほとんど答えていませんでした。そしてわずか3日後の同じ記者会見で、毛寧氏という女性の報道官が同様の質問を受けました。「まず、秦剛氏はまだ外交部長ですか?なぜ姿を消しているのか?なぜ公の場に出られないのか?」と。毛寧氏も少し沈黙し、そして最終的には回答を拒否しました。「外交部のウェブサイトをご覧いただければわかります」と言ったのですが、実際にはウェブサイトには何も書かれていませんでした。この外交部の報道官の反応からも、興味深いヒントを得ることができます。

まず、外交部の報道官は独断で答えることはできません。これは国際的に共通のルールです。外交部の報道官の回答は個人的な意見ではなく、その国の外交政策や国家の立場を代表するものです。そのため、慎重に答える必要があります。一般的な国の報道官は、知っている限り答えることができます。もちろん、言ってはいけないことは省き、比較的率直に説明することもあります。答えられない場合でも、何らかの理由を説明し、なぜ答えられないのかを示します。しかし、中国の報道官はどんな些細なことでもトップの許可なしには話すことができません。これは毛沢東時代から変わっていません。それにも関わらず、16秒間もの沈黙が起きたのは非常に異様な状況です。普通ではありません。もしその場で「ノーコメント」や「知りません」と即座に答えが返ってきたのであれば、まだ理解できますが、16秒間の沈黙は非常に異例です。

中国では以前にも同じようなことがありましたが、一般的な国ではこれは異例です。なぜ彼らが16秒もの間沈黙し、その後も答えられなかったのか、理由は2つ考えられます。まず第一に、予想外の質問が飛んできたためです。最初からその質問を考えていなかった、または準備していなかったのです。このような質問が出ることを予想していなかった可能性があります。ただし、この可能性は低いと言えます。なぜなら、それは注目されることであり、しかも外交部のトップが不在である場合には、当然そのような質問がされるものだからです。したがって、予想外の状況ということは基本的にはあまりありません。そこで考えられるのが、2つ目の可能性です。つまり、意図的にそうしたのです。なぜなら、答えられないのであれば最初から沈黙することは必要ありません。しかし、意図的に長い沈黙を経てからまた拒否したのは、私の見解では最も可能性が高いです。ではなぜこんなことを意図的に行ったのかというと、これは1つの抗議のなのです。具体的には、上層部が私たちが簡単に答えられるような指示を出していないという抗議です。

もう1つの可能性は、これは習近平を困らせるための抗議表現だということです。外交部の報道官は習近平から見れば下級の存在ですが、彼らは直接習近平に抗議することはできません。しかし、このような混乱の中で彼らは困っています。なぜなら、その混乱の原因は習近平自身だからです。したがって、彼らが意図的にこうした行動をとり、自分たちが困っているように見せると、世界のメディアはこれを報道し、さらにその背後に何があるのかを探るでしょう。このような状況に対して最も嫌がるのは習近平です。しかし、習近平はなぜ明確な指示を出さないのでしょうか。私の見解では、秦剛の処遇についても習近平自身が迷っていたからだと思います。実際、秦剛は出世が早かったのです。彼は中国の外交部内ではあまり歓迎されていない存在です。中国の外交部には様々な派閥が存在します。これは日本の官僚制度と同様ですが、出身校によって派閥が形成されています。例えば、王毅は北京の第二外国語学院出身であり、その学院には派閥が存在します。同様に、北京大学や北京外国語大学、上海外国語大学、復旦大学などにも派閥があります。秦剛は国際関係学院出身であり、国際関係学院は中国の国家安全部に所属しています。国家安全部はスパイ活動を行っている組織であり、国際関係学院はスパイを養成する大学とも言えます。したがって、秦剛はスパイとして養成された人物です。スパイは一般的には尊敬される存在ではなく、またスパイと親しい関係を持ちたいと思う人も少ないでしょう。スパイと友達になると、常に自分が監視されている可能性があるため、神経を使うことになります。いつ自分のことをどのように探られているのかは分からないため、スパイの出身ということは一般的には好かれている存在ではなく、逆に警戒されているような存在です。

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