アメリカの下院議長選挙はすったもんだの末、15回目の投票でようやく選出されました。1月8日(日本時間)の夜中にようやく共和党のケビン・マッカーシーが下院議長に選出されて、3日後の1月10日に彼の公約通りに中国委員会を成立させたわけです。しかしその名前は中国委員会ではなく、Strategic Competition Between US and CCP。つまり戦略競争特別委員会です。アメリカと中国共産党の戦略的競争の特別委員会です。中国委員会の方がもっと分かりやすかったのではないかと思いますが、わざわざ中国を抜いて、中国共産党という名前を入れたわけで。ある意味で中国共産党と戦略的競争をやっていくという委員会です。これは非常に大きな意味があると思います。つまり、中国政府、中国共産党だけが敵。中国人全体が敵なのではない。中国そのものは敵ではない。しかし中国共産党が敵なんです。競争、competitionという言葉を使っているのですけれども、内容から見れば基本的には敵対行為です。この委員会はなんと365票の賛成、65票の反対で、圧倒的多数で通過しました。この圧倒的多数とはどういう意味かというと、この委員会の設立には決して共和党だけが賛成したというわけではないということです。民主党の大半も賛成しているんです。民主党の3分の2以上の議員もこれに賛成している。だからこの委員会は基本的には超党派です。つまり、アメリカの政界の中に中国問題、あるいは中国共産党が問題だという意識は、共和党に限らず、民主党も同じ考えを持っているということです。その意味でアメリカの政界の対中国共産党への姿勢はかなり一致していると解釈していいでしょう。
中国共産党だけが問題だと、いつ頃から変化したか。一番明確な変化の姿勢は、実は2018年の10月8日、当時の副大統領のマイク・ペンスはハドソン研究所での講演です。はっきりと中国共産党と分けて考えるような、ある意味で中国共産党への宣戦布告とも言えるような演説でした。1年後の2019年の10月24日に同じくマイク・ペンス副大統領がウィルソンセンターで、ほぼ同じような内容をもう一度演説しました。その時彼が強調したのは、邪悪な中国共産党です。中国共産党は邪悪的な存在。つまり打倒しなければいけない存在ということです。ではこの中国共産党と戦略的に競争していく特別委員会の役割とは何か。いったいこの委員会を立ち上げて、本当に機能するのか。実はアメリカの議会にはたくさんの委員会がある。その委員会は必ずしも全て機能しているわけではない。委員会と言えば、国会の中でかなりの法的権限を持っていると思われますが、実はそうでもありません。アメリカには軍事委員会とか外交委員会、あるいは歳出委員会という法的権限を持つ委員会もありま。法的権限を持つ委員会とは何か。法案を提出する権限がある。あるいは、この委員会にかけなければ法案を提出できない。あるいはこの委員会を通さなければ予算は成立しないというのが、法的権限を持つ委員会。一方ではそういう法的権限を持たない委員会もいっぱいあります。
では今回の中国特別委員会はどうか。今回の委員会も実は法的権限を持っていない委員会です。つまり外交委員会や軍事委員会のように、この委員会を通さなければ法案を成立できないというような委員会ではありません。しかし、法的権限を持っていないからと言って、この委員会の権限は少ないと解釈していいのか。実はそうではありません。まずこの委員会の主要人物を見れば分かります。委員長として任命されたのは、38歳のウィスコンシン州選出のマイク・ギャラガーです。2016年からずっと連続当選していて、実は彼は7年間、海兵隊に従軍したことがあり、専門は情報分析です。実際、彼の専門分野はアラブ諸国で、中東地域と北アフリカです。アラビア語も話す極めて優秀な人間です。彼はプリンストン大学を卒業し海兵隊に入って、退役後は国家情報大学で修士号を取った後ジョージタウン大学で博士号を取りました。2016年からずっと連続当選しており、ある意味で非常に安全保障に精通している人間です。彼が委員長に任命された時の発言は、「中国人は我々の敵ではない。中国人も実はこの中国共産党体制の中の被害者なんだ」と発言しています。これは当然そうです。戦略的に我々が10億の人間を全部敵に回した方がいいのか、あるいは中国共産党だけ、現在の政権だけ敵に回した方がいいのかというのは、もう非常に簡単に分かることです。当然敵はできるだけ少ない方がいいです。ですから中国人を味方につけて、一緒に中国共産党を倒す方向に持って行った方が、もっと効率的ではないかということですけれども。
では、この委員会は一体何をやるか。中国共産党と競争していくというのは、漠然としたイメージしか出てきませんが具体的に何をやるのでしょう。これはギャラガーとケビン・マッカーシー下院議長の発言を見れば分かります。実は2022年の12月8日にケビン・マッカーシー下院議長とマイク・ギャラガーが連名で、FOXニュースに投書しました。そのFOXニュースの投書のタイトルは何かといえば、We are in a Cold War with China、つまり「我々は今現在、中国と冷戦中なのだ」とはっきりと言ったんです。
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