「CSISシミュレーション・中国の台湾侵攻は成功できるか?」

台湾

1月9日にワシントンDCにある非常に有名なシンクタンクのCSIS、戦略国際問題研究所、アメリカ政府に非常に影響力のあるシンクタンクなんですけれども、1つのあるレポートを発表しました。このレポートの題名とは何か。The First Battle of the Next War、つまり「次の戦争の最初の戦闘」。内容は何かというと、Wargaming a Chinese invasion of Taiwanということで、つまり中国の台湾侵攻のシミュレーションです。シミュレーションはアメリカ政府もよくやりますが、アメリカ政府がやるシミュレーションは大体非常に悲観的です。例えば、国防総省は何回も米軍と中国軍=人民解放軍との戦いのシミュレーションを出していたんですけれども、大体米軍が負けます。恐らくそのシミュレーションは公開した部分はほんの一部に過ぎないと思います。国防総省の公開したシミュレーションは全部とは言い難いです。なぜかと言うと、当然その中に軍事的機密がたくさん書いてあるわけで、全て公開するわけにはいきません。しかし、公開した部分に限って、米軍が弱いんです。なぜ自分が弱いとわざと宣伝するのか。これは予算を取るための1つの手段だと考えられます。1つの策略です。米軍はこんなに弱いからもっと予算を増やせ、ということです。ある意味で国会対策です。

シミュレーションをするということは、wargameといいます。wargameというのは普通のゲームではありません。つまり戦争のためのシミュレーションです。シミュレーションというのは頭の体操なんかではありません。このシミュレーションをやるために、例えば中国と台湾の間の戦争の関係国は少なくとも4つあります。どの国かと言うと、もちろん当事者である台湾です。そして侵略者である中国。米軍も基本的には当事者です。さらに日本も当事者です。だから少なくとも4か国が当事者になるわけです。この4か国のシミュレーションということは、少なくともこの4か国の軍事状況、武器の数量、軍隊の数、そして軍の指揮系統まで、内部の非常に細かいところまで把握できないと、シミュレーションできません。シミュレーションというのは大雑把に言えば、大体2種類あります。1つはwargame。wargameの場合は、基本的には大がかりなシミュレーションです。コンピューターを使って、専門家がいろいろなデータを入力して、兵器の数とか種類、精度、弾薬の数とか、そこまで把握できないと、シミュレーションはできないわけです。そしてこの当事者4か国が一緒に参加して、中国もどうぞ参加してください、ということは当然あり得ないことですから、必ず中国の軍事状況にも精通している専門家じゃないと、このシミュレーションはやれないわけです。そういうわけで、国、国防総省がやるシミュレーションは大体悪くしたようなのを出すので、ある意味で逆に信頼できないんです。意外と政府とものすごく深い関係を持っている民間のシンクタンクのやるシミュレーションの方が、より真実に近いということもあり得るわけです。今回のCSISのシミュレーションの参加者はまさに、アメリカの軍人のOBが参加したりしています。そして国防総省のOBも参加している。この公開した部分のレポートはネットでもダウンロードできます。全部で165頁で、そんなに多い分量でもありません。当然そシミュレーションの全てではありませんけれども、もし興味があれば、CSISのホームページからダウンロードできます。もし全部を読む時間がなければ、その中には図表とかがいっぱいあります。図表を見たり、まとめだけを見たりしても、非常に役に立つと思います。このシミュレーションを発表したのは日本時間の1月10日なんですけれども、すぐに世界の主要のマスコミに取り上げられているわけです。日本のマスコミも含めて、世界中のマスコミがこれを取り上げているわけですから、ある意味で非常に注目されている。恐らく中国のトップ、当局も、軍事専門家も、台湾の軍事専門家も、日本の自衛隊も、アメリカの現役の軍人たちも、このレポートを参考にしているのではないかと思います。

では、このレポートとはいったいどんな内容なのか。このシミュレーションは実は24回も行われています。24回。1回のシミュレーションは数時間で終わるものではなく、場合によって数週間かかる場合もあります。このシミュレーションではかなりの人数で、あなたのチームはアメリカを担当すると、このチームは日本を担当する、このチームが台湾を担当する、そのチームが中国を担当する、それぞれが、中国なら解放軍になりきって、なったつもりでいろいろな攻防をやるわけです。台湾や日本を担当する場合もそうなんですけれども。ですからかなり時間をかけてやっている。実はこのシミュレーションは去年の8月頃からやり始めて、全部で24回やったんですね。24回のシミュレーションの結果として、2023年の1月9日に発表したわけですね。このシミュレーションの結果としては、大まかに言えば全部で4つのシナリオがあるんです。Base(基本)のシナリオ、これは恐らく一番常識的ではないかというのはBaseシナリオですね。そしてpessimistic、つまり一番悲観的なシナリオ、これは19回もやっている。Baseシナリオは3回やったんですけれども。悲観的、つまり自分の陣営、台湾・アメリカ・日本、この3つの陣営にとって、一番悪い状態のシナリオを19回もやっている。そしてoptimistic、つまり一番楽観的な状態、相手が一番悪く自分が一番いい状態でのシナリオもやったんですね。でも一番多くやったのは悲観的なシナリオ。当然と言えば当然ですね。自分の一番悪い状態とは何か。そしてこれの改善すべき点とは何かという面について(理解するに)は、役に立つわけです。最後にもう1つのシナリオもやった。つまりTaiwan aloneですね。誰も助けてくれない。中国が台湾を侵略して、アメリカも日本も武器も援助しない、もちろん出兵もしないということで。こういうことはあり得るか。まあ政治家の態度から見れば、あり得ない話ではないですね。特に日本の政治家の場合、こういう戦争になったら、その反応は大体予想できるんですね。どいいう反応かと言うと、戦争はダメだ、平和を守れ、と、つまり平和教を唱えるわけですね。平和教を唱えれば世界平和になるという(考え)。恐らく日本の政治家でこのようなマインドを持っている政治家は多いのではないかと思います。ただし、アメリカの場合は今の民主党にしても共和党にしても、この平和教の信者はそんなに多くないと思いますね。だからこの事態(Taiwan alone)は、可能性は低いのですけれども、一応ゼロではない。ゼロではないから(シミュレーションに)入れている。この4つの状態の24回のシミュレーションの中で、中国が台湾を侵略して成功したという例はたったの1回ですね。どの1回かと言うと、誰も台湾を助けてくれない場合は中国の侵略は成功するんですね。つまりTaiwan aloneの場合だけ。では、一番常識的な、一番可能性の高いBaseシナリオの場合は、人民解放軍は台湾に何人くらい上陸するのか。大体3万人くらいは上陸が成功すると。3万人も台湾に上陸するということですね。そして台湾の領土をどのくらい一時的に占領できるか。大体南の方なんですけれども、南の方は平野が多いし、上陸できる海岸が多い。大体2400キロ平方メートルですね。これは台湾の国土のおおよそ7%くらい。おおよそ7%くらいの領土が人民解放軍によって占領される。そしてこの戦闘機関は大体どのくらいかというと、2週間くらいです。では、この一番悲観的なシナリオの場合はどうなるか。人民解放軍はおおよそ4万3000人が台湾に上陸する。どのくらいの領土を占領するかというと、大体6240平方キロメートル、国土のおおよそ17%ですね。戦闘の期間はどのくらいあるか、大体21日、3週間くらいですね。そして一番楽観的な状態、つまりアメリカ・台湾・日本にとって一番楽観的な状態は、人民解放軍はおおよそ2万2000人くらいの人間が上陸するんですね。台湾の領土は大体780キロ平方メートルを占領する。国土のおおよそ2%ですね。戦闘期間はおよそ1週間。1週間で終わっちゃうんですね。台湾だけで中国と戦う場合は、どのくらいの人民解放軍が上陸するかというと、おおよそ16万人。16万人も上陸するわけですね。そして占領する領土はつまり台湾全土を占領するんですね。3万6000平方キロメートルを占領してしまうんですね。どのぐらいの時間になるかと言うと、おおよそ70日ですね。つまり10週間ですね。この10週間の中の大体3週間で、台南と高雄を占領してしまう。そして僕の故郷である台中まで占領する。そして10週間ぐらいで台北の総統府を占領しちゃうんですね。

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