本棚の写真で分かる習近平の内心

台湾

我々にとって普通は人間の内心を知るということは難しいですよね。権力者の場合はさらに難しいです。彼はいったい何を考えているのか。心の中でいったい何を思っているのか。我々はだいたいどのようなところで真実を語るのか。それは飲み会の場です。ほとんど警戒心のない時に、わりと本音を語るわけです。しかし公の話では基本的には建前の方が多いです。本音の部分は少ないです。中国の独裁者であればなおさらそうです。中国の独裁者の内心の世界はだいたい窺い知れないわけです。どうでもいい人間であれば、内心どう思っているのか、我々は関心を持たなくてもいいのですけれども、それなりに経済力もあって軍事力もあるような中国ほどの大きな国、権力者、特に習近平ほどの独裁者は、やはり何を考えているのか知りたいです。知りたいのは、この人に興味があるからではなく、それほどの影響力を持っているからです。今の中国は基本的に習近平の一言で全て決まるような状態なので、なおさら彼の内心の世界を我々は知りたいわけです。ところがどのような場面で、彼の本当の本心を知ることができるのか。彼の言葉なのか。あるいは彼のしぐさなのか。あるいは彼のやっていることなのか。やっぱり権力者ほどオブラートに包まれていて、本音をなかなか明かしてくれません。それでも我々は彼らの行動のいろいろな側面から分析していかなければいけません。

最近の例からすれば、つまり彼の元旦談話です。元旦談話は12月31日の大晦日に発表されました。彼の話よりも、この元旦談話で撮った全国公開の映像に映る後ろの本棚に飾っている写真、そこが1つのメッセージなんです。その写真は全部で27枚ありますが、その写真プラス彼が発した言葉を合わせて、彼の本当の意図を分析できるのではないかと思います。今回の元旦談話は全体的に見てどのような印象を受けるか。僕は、3つの側面があると思います。1つ目の側面としては、習近平は本当に救いようのないナルシストだということ。2番目は習近平はもうこの国を俺のものだと思っている。恐らく毛沢東以来、一番露骨にこの国を私物化している権力者ではないかと思います。ある意味で北朝鮮の金王朝のような存在と判断していいと思います。3番目は弱気です。今回の元旦談話では、習近平はかなり弱気になっていると思います。なぜ弱気だと言えるのか。この元旦談話の中で、かつ後ろの27枚の写真を見れば、彼は明らかに敵に媚びを売っているわけです。

1番目、なぜ習近平はナルシストと言えるのか。権力者であれば、特に独裁者であれば多かれ少なかれ自己愛の強い人間だと思われます。つまり、ある程度ナルシストです。しかし、習近平は極端なんです。病的なほどのナルシストだと言えます。我々は普通、自分の書斎とかオフィスとか、あるいは政治家の事務所とかに何枚かの写真を飾ります。何枚かの写真を飾っている場合、それは1つのメッセージになります。政治家の事務所であれば、人が入るわけです。だからそれを見て、ああなるほど、あなたはこれを大切にしているんですね、というふうに分かるわけです。アメリカの政治家でもよくありますが、だいたい自分の家族とか子ども、妻とか、あるいは自分が尊敬している人、場合によってはペットとか、せいぜい数枚くらいの写真を飾っている。それで十分です。人間というのはどうでもいい写真などは飾らないわけです。ましてや、敵の写真なんて飾る人は恐らくいないと思います。ところが習近平がわざと飾っている。しかも元旦談話でみなさんに見せる本棚にある27枚の写真、なんと自分の入っていない写真は2枚だけ。つまり25枚は全部自分が入っている写真、自分が主役になっている写真です。自分の入っていない2枚の写真の1枚は奥さん、もう1枚は自分のお父さんです。つまり自分の家族です。合わせて見ると、27枚の写真は全部自分か自分の家族と一緒になっている写真です。自分だけの写真、他人は誰も入っていない写真は5枚もあります。普通であれば、自分の写真を5枚も飾っているのは恥ずかしくてしょうがないです。誰も入ってこないところで、自分1人で見て自己満足するだけならまだいいんですけれども、みんなが見ている中、自分の写真だけ5枚をでかでかと飾っている。しかも若い時の写真とかもです。さらに、そのほかの写真の大勢の人間は背景に過ぎない。自分だけでかでかと前の方に出ている。それ以外の人間はただの背景。自分の入っている写真、あるいは自分だけの写真が25枚もある。これだけでも分かるように、彼は自己中心的、自分だけが大切ということです。

そして2点目はなぜ、この国は俺のものだと思っているか。普通の国の指導者であれば、無私の精神が必要です。つまり自分が大切にしているのは自分の家族だけではなくて、国民です。全ての人間の家族です。もちろん自分の家族愛はいいことですけれども、自分の家族だけ大切ということであれば、指導者としては失格です。自分の家族よりも国民全体の家族を大切にするような姿勢が必要です。ところがこの27枚の写真の中に、自分の家族だけ、国民や他人が一切入っていない写真は16枚もあります。つまり16枚は自分の家族関係、それ以外の他人は一切入っていない。27枚の中の16枚。半分以上、自分と家族だけ。しかもそれは公的な場所を使って、しかも全国放送で、全国の人間に向けて宣伝するわけです。だから、彼にとってはこの国はもう俺のものだと考えていると分かります。

では3番目、なぜこの写真から弱気と分かると言えるのか。実は非常に意味深な写真が2枚あったんです。その1枚の写真は実は1999年の9月30日の中国の建国50周年記念日に撮られた写真です。それは習近平が入っていない2枚の写真のうちの1枚です。その写真に入っているのは習近平のお父さんである習仲勲。江沢民と一緒に撮った写真です。江沢民は当時の国家主席、総書記、権力者だったので当然こういった建国50周年の記念会に出るわけです。そしてその時に習仲勲と話をしている写真を撮られたんです。そしてもう1枚は、習近平、江沢民と胡錦濤、3人で撮った写真です。江沢民は2022年に亡くなったんですけれども、この元旦談話の中でも江沢民の話が出たわけです。どのように言ったかというと、「我々は江沢民同志の遺志を受け継いでこれからも頑張らなければいけない」と、江沢民をかなり高く持ち上げたわけです。27枚の写真の中で江沢民の写真を2枚も入れたということは、何を意味しているか。彼の1期目と2期目の時は彼の敵と見なしている、いわゆる反腐敗運動で弾圧する相手はみんな江沢民派です。全部ではないですけれども、ほとんどが江沢民派です。その江沢民派はつまり江沢民の10数年の政権の中で一番腐敗しきっている人間。それと同時に、アンチ習近平の人間でもあります。ですから彼が一番敵対している勢力とは江沢民派という勢力です。しかし今回の元旦の挨拶でもわざわざ江沢民を持ち上げるなど、写真を2枚も出している。1枚は自分のお父さんと一緒に撮った写真。もう1枚は自分と、そして胡錦濤と一緒に撮った写真。これは明らかに江沢民派に和解の意志を送っていると思います。ある意味で、今まで強力的に弾圧した人間に対して、握手しましょうよという1つのメッセージです。

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