蔡霞論文「習近平の弱点」からみる中国の近未来

台湾

台湾ボイスの皆様、こんにちは。林建良でございます。

我々が中国の分析をする際には、幾つかの情報収集が必要です。基本的にどんな国でも8~9割は公開された資料から分析をするわけです。残りの1割せいぜい2割ぐらいは内部資料です。内部資料であるほど信用できないものなんです。しかし中国はやはり非常に情報統制の強い国なので、独裁社会の特徴としてできるだけ自分にとって不利な情報を外に出さないようにする。あるいは外に出す情報も基本的には嘘の方が多いんです。ただし、公開された情報もかなりの判断材料になる。どのような判断材料になるかというと、時系列で分析すれば、「以前はこうだった」などあるいはその情報と政策が一致していれば、その情報は正しいものと分かるわけです。ですから、このような綿密な分析、パズル合わせるような労力によってようやく中国の真実像が浮かんでくるようなものなんです。その中でも実は非常に貴重な情報がある。

もともと中国の内部、上層部にいた人間が外に出て、何らかのきっかけで当局と喧嘩した
、あるいは亡命したとか、亡命者の情報は非常に貴重なんです。なぜ貴重かというと。彼ら、あるいは彼女らの方が内部の運営状況、内部のしきたりもよく分かるわけです。そして彼らが外国に出た後も何らかのコネや手段を使って内部と連携しているわけです。そして中国は幾ら情報統制をしても内部としては一枚岩ではありません。中国の上層部も一枚岩ではないんです。中国の中に9,000万人ほどの旧共産党員がいるわけですけれども、上層部の非常にうまい汁を吸っている人間はおおよそ500万人です。この500万人の中でもいろんな思惑があって、いろんな権力闘争があって、わざと情報を外にリークしたりする場合もあるんです。もちろんリークしたりする情報は必ずしも正しいとは言えません。いろんな思惑がある。ただし、そのリークされた情報の中から、別の情報もあわせて分析をして、この情報が正しいといろんな試行錯誤をして長く中国のことを観察すれば、大体この情報なら信憑性があると、ある程度はわかるんです。その中国の情報の中で、ピカ一の情報は誰からの情報かというと、台湾ボイスでも何度か紹介したことある蔡霞さんの情報です。蔡霞が2020年に習近平の悪口を言いました。公開的に悪口を言ったわけではなくプライベートの集まりで「マフィアのボスだ」と批判したわけです。それがなんと中国のSNSにアップされちゃったんですね。これは意図的にやったか、あるいは蔡霞に悪意を持ってわざとアップしたかは分かりません。しかしそれによって蔡霞は今はアメリカに亡命せざるを得なくなったんです。もともと共産党員でしたが除名されて、さらに自分の年金も剥奪されたわけです。

蔡霞がどういう人間かというと15年間中央党校で教えていたんです。中央登校とは中国共産党の高級幹部養成機関です。これからトップになるエリートたちは党の組織とか思想とかいろん政治手法とかをここで勉強するわけです。実際、上は彼らの先生なんです。要は、今の中国の共産党の上層部たちエリートたちの先生なんです。しかも蔡霞本人もいわゆる紅二代です。紅二代とは中国の革命員の2世ですね。紅二代の中でも1段格の高い軍二代みたいです。つまり父親も母親も軍の出身なんです。その意味で蔡霞は中国のエリートの中のエリートの中であり、周りの人間は太子党と言われているようなエリートたちで今でも付き合いがります。彼女は9月7日にある論文を発表しました。ものすごく長い論文で1万字前後もあります。この論文はアメリカのかなり有名な雑誌、フォーリンアフェアーズに掲載されました。台湾ボイスでも何度か紹介したことがある非常に影響力のある雑誌で、全世界の外交関係者、あるいは外交関係の学者たち、国際関係の学者たちはほぼ必ず読むと言ってもいいような2カ月に一回出る雑誌です。その9月と10月号で論文を発表しました。この論文のこのテーマとは「習近平の弱点」。How Hubris and Paranoia Threaten China’s Future.つまり習近平の傲慢と偏屈によってどれほど中国の将来を危うくしたかという論文です。

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