世界情勢の回顧と展望

台湾

藤井:こんにちは。藤井厳喜です。今日も台湾ボイスをお送りいたします。只今12月28日、年末も随分と押し迫ったところですが、年内最後の林建良さんとの対談になります。林さん、今日もよろしくお願いします。

林:よろしくお願いします。

藤井:お願いします。林さん、ここが新しいスタジオです。後ろを見ていただくと、台湾ボイスのためのスクリーンが貼られています。台湾のいいところ、美しいところ、おいしいところ、日本との関係を写真で紹介しています。前向きで明るいイメージだと思いませんか。

林:いいですね。

藤井:若々しい国家、台湾というイメージで作らせていただきました。

林:日本との繋がりのある台湾総統府。昔の総督府です。そして台湾人のために犠牲になった日本人、飛虎将軍(ひこしょうぐん)。そして台湾を代表する玉山(ぎょくざん)、新高山。

藤井:かつての新高山ですね。

林:はい。

藤井:これからは林さんとの対談はこちらのスクリーンをバックにお送りしたいと考えています。さて、今日は年内最後の対談です。いつも通り四つの部門に分けて話していきますが、1番目と2番目は私が担当します。1番目は今年の国際情勢を振り返るとともに、来年を展望します。2番目は日本の国内情勢を展望していきます。政治、経済、社会の出来事について2022年に起きたことを振り返りつつ、来年を展望します。それから第3部は林さんにお願いしたいと思います。

林:中国情勢について話したいと思います。この1年間に中国で起きたことに加え、2023年を予測したいと思います。また4番目では台湾で今年起きたこと、さらに来年の予測についてお話ししたいと考えています。

藤井:4部構成で語っていきたいと思いますが、まず私から始めさせていただきます。2022年を振り返ってみて、最も大きな国際的な事件はウクライナ戦争だったのではないでしょうか。

林:そうですね。

藤井:一般的な見方ではウクライナ戦争は2023年も続くのではないかと予測されています。またウクライナ戦争に絡んでエネルギー危機が起こり、国際的なインフレが大きな問題となりました。日本や台湾のように天然ガスや石油の輸入国は非常に困っています。ロシアから大量の天然ガスを買っていたヨーロッパ諸国はこれが買えなくなったということで、電力事情が非常に厳しい状況に置かれています。ちょっと自慢をさせていただくと、私は2021年の年末に2022年に何が起きるのかという10大予測をして、そのなかでプーチンがひょっとするとウクライナ侵攻に踏み切るのではないかというような話をさせていただきました。

林:はい。

藤井:もちろんウクライナに侵攻したプーチンが悪いことには違いないと思います。私がなぜウクライナ侵攻が起きるかもしれないと予想したのかというと、アメリカで誕生したバイデン政権が反ロシア色の強い政権だったからです。それで以ってウクライナのナショナリズムを盛り上げ、ロシアに対して厳しい態度を示すなど、新冷戦的な態度で臨んでいたからです。特にロシアが頼みにしていたノルドストリーム2を稼働させないというようなことが実際に起きていました。ノルドストリームはロシアからバルト海の海底を通って、ヨーロッパに天然ガスを直接輸出するガスパイプラインです。もともとノルドストリーム1が稼働していましたが、輸出量を倍加しようということでノルドストリーム2を完成させたわけです。ところがアメリカやドイツのなかに反対派がいて、完成したのに稼働できないというような状況が続いていました。プーチンは「いじわるされているな」と思っていたことでしょう。プーチンも決して文明的な人ではありません。私はもしかしたらプーチンがキレてしまうのではないかと考えていました。

林:なるほど。

藤井:なぜかというと、プーチンにはクリミア半島の乗っ取りに成功したという成功体験があったからです。「電撃作戦でやってしまえば、西側も出る幕はないんじゃないか。だから侵攻するかもしれないね」ということを2021年の暮れの段階で話していました。

林:はい。

藤井:ところが実際の2月24日の侵攻は私も予測できなかったわけです。アメリカのバイデン政権に加え、イギリスも「ロシアがウクライナに侵攻するんだ。危ないんだ」ということを盛んに言っていたわけです。

林:はい。

藤井:クリミア半島と同様に、もしかしたらロシア系住民が多数を占めるウクライナ東部をパッと占領してしまって、形ばかりの住民投票をやったうえで併合してしまうのではないかと私は考えていたわけです。攻めるかもしれないとは思ったけど、まさかキエフに向かって侵攻するとは思っていなかったんですよ。

林:なるほど。

藤井:公開情報で19万ぐらいの軍隊をベラルーシのほうに集めていたという情報は私にも入っていました。しかしウクライナだって、攻められたら抵抗するでしょう。だから、これはそんなに簡単なことではないだろうと考えていました。プーチンに裏をかかれた軍事評論家は多かったと思います。事情を知っている人ほど、プーチンに騙されたのではないでしょうか。なぜかというと、敵国の首都を陥落させるのに19万の軍隊はすごく少ないからです。

林:そうですね。

藤井:一見多いように感じますが、19万は少ないんですよ。

林:少ないですね。

藤井:これが無抵抗だったら別です。しかし無人の荒野を行くわけではなく、首都ですから相手も必死に防衛するだろうということは容易に想像できます。第2次大戦の歴史を調べてみると、ウクライナがドイツ軍に占領されたときにソ連軍がそこを攻めたわけですが、ソ連軍はキエフ攻略に70万の兵を動員して奪還しています。今回の場合、NATO軍はいないものの、アメリカやNATOがウクライナの軍備強化を支援しているということは周知の事実ですから、私はそれこそ陽動作戦だと考えていました。

林:なるほど。

藤井:要するに「キエフを攻めるぞ」と言って兵隊をそこに置いておいて、実際には動かさず、主力の部隊を東部にドッと入れてドンバス地方を一挙に占領してしまい、そこで住民投票をやってしまう。ロシア系住民が多いから実際に住民投票をやったとしても勝つかもしれない。

林:そうですね。

藤井:これはクリミアのときに用いた手法です。これを繰り返すものだと考えていました。さすがにプーチンのロシアが2月24日にキエフ方面を侵略するとは予測できなかった。その意味で予想は外れましたが、これはやっぱりおかしいと思っていた軍事評論家が最終的には正しかったということです。なぜならキエフを落とすことはできなかったからです。キエフに関しては北のベラルーシから攻めてきた軍隊は結局、引き揚げてしまいました。

林:はい。

藤井:これに関してはプーチンにとって大きな誤算であったことは間違いないと思います。プーチンはウクライナがおそらく無抵抗だと考え、サプライズで侵攻すればゼレンスキー大統領など国家中枢がパニック状態に陥って逃げてしまうだろうと考えていたのではないでしょうか。これは実におかしなことなんですが、ロシアがウクライナに攻めてきた直後にアメリカやイギリスは「亡命政権を早く作れ」としきりに発言していた。要するにウクライナを出国してイギリスかドイツあたりに逃げて、亡命政権を作れというようなことを言っていたわけです。もし本当にそうなっていたら、ウクライナは首都キエフが陥落していたでしょう。

林:はい。

藤井:ゼレンスキーという人は「俳優上がりだ。コメディアン上がりだ」とバカにされていましたが、そこで意外に頑張った。

林:そうですね。

藤井:今も彼は立派な戦時大統領になっています。その点でプーチンが計画で聞いていたこととはどうも違っていたというのが本当のところではないでしょうか。元KGBのプーチンは情報の専門家ですが、トップのポジションに20年も居座り続けた結果、周りがイエスマンばかりになってしまった。プーチンの耳には心地いい情報しか入ってこなくなったのではないかと思います。彼はサプライズ作戦で侵攻すれば敵の国家中枢がパニック状態に陥り、その隙に一気に首都を陥落させて傀儡政権を作るということを想定していたはずです。

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