ワクチン支援を断る中国・その深層

台湾

今の中国の一番ホットな話題は何かといえば、恐らくコロナの感染ですね。中国のコロナの感染者数は一体どれくらいあるか。中国政府公表の人数は今でも数千人なんです。実際何人いるのか。この数千人の感染者数は公表した本人も恐らく信じられないと思いますけれども。12月23日のアメリカのブルームバーグが報道によると、12月21日の中国国家衛生委員会の内部情報によると、1日の感染者数はおおよそ3700万人ですね。でも公表したのは3000人ですね。1万倍の差があるんですね。その3700万人の中で1日の死亡者数はどれくらいあるかというと、その内部情報によると1日5000名なんです。この5000名というのはちょっと信じられないですね。1日3700万人の感染者数というと、おおよそ合理的な数なんですけれども、しかしその死亡者数が5000名というのはとても信じられないです。なぜかと言うと、今中国で流行っているのはオミクロン株だけなのかと。少なくとも中国のいろいろな内部の情報を総合的に見ていると、かなり死亡者数が多いわけですね。彼らの判断の根拠とする致死率は恐らく0.24%なんですね。では1日の感染者数は3700万人であれば、致死率が0.24%で計算すれば、少なくとも1日の死亡者数は8.8万人に上るわけですね。これはすごい数です。1日8.8万人です。もちろんこれは12月に入ってからのピーク時のデータかもしれません。しかしいつ頃このピークを超えるか、峠を越えるか。まだまだピークの真っ最中なんです。だから中国は、なぜこんなにたくさんの人間が感染して、そしてたくさんの人間が死んでいくのかと言えば、その最大の理由としては中国の国産ワクチンが効かないからです。中国の国産ワクチンをどのくらい中国人が接種しているかと言うと、おおよそ9割なんですね。つまり9割の中国人は少なくとも2回の接種を受けているわけですね。しかし2回の接種を受けていながら、なおかつこれぐらいの感染率、これぐらいの死亡率になっているのです。ある意味で外国のメッセンジャーRNAのワクチンと比べれば、明らかに効果が劣っているわけです。ですから中国人からすれば国産のワクチンを打つよりは、できれば外国のいいワクチンを打ちたいわけですね。実際アメリカからもドイツからもワクチンを提供しようと中国にオファーを出したわけですね。しかし中国はこれを断ったんです。なぜ断ったのか。

いろいろなマスコミの論評があるんですけれども、「中国は面子を重んじる国だから、民族だから外国からの支援は受け入れられない」というような論評が一番多いんですね。恐らくほとんどの人間もそれを信じていると思うんですけれども、しかしその論評は中国人の考え、中国人文化を知らない論評なんですね。なぜかと言うと、僕に言わせれば、中国人にとってこの面子は一文の価値もありません。違うんじゃないか? 中国の政治家も言っているし、日本の政治家もよく言うのは「中国は面子を重んじる国だから、大切におもてなしをしなければいけない」「大切に彼らのことを扱わなければいけない」とかそのように言うんですけれども。それは中国の一種の策略なんですね。そのように思わせたいだけであって、中国は面子を重んじる国だから大切にしないと大変なことになるぞ、ということで。これは一番本当に安上がりな外交なんですね。何のコストもかからない。では中国人にとって面子は一文の価値もないと、なぜそんなことが言い切れるのか。

まず僕自分の経験から言います。僕は1987年に日本に留学に来たんですけれども、当時は中国の留学生もけっこういたんですね。しかし1980年代の中国人留学生はほぼ決まって中国共産党の幹部などで、エリート中のエリートしか外国に留学に行けない時代だったんです。その当時の東大では年に1回学長主催の留学生のための忘年会があるんですね。その留学生のための忘年会は東京の椿山荘でやっていたわけです。ご存じだと思いますけれども、椿山荘は非常に格調の高い庭園のあるホテルなんですけれども。その上品で豪華な会場ではバイキングの食事が出されているわけですね。そしてその中国人留学生たちは、学長がまだ挨拶をしているうちからもう食べ物の奪い合いを始めているわけですね。お皿に乗り切れないほどの料理を載せて。それだけならまだいいんですけれども、彼らは食べた後のものを平気で床に捨てたりするんですね。彼らは中国ではエリート中のエリートなんですよ。全く礼節を知らない人間ではないんですけれども、しかしこの食べること、つまり実利ですね。実利を優先させて面子というものはかなぐり捨てているわけです。面子なんてもう全然関係ない。その中の奪い合いなんです。今でも中国の観光客がホテルで運悪く一緒にバイキング会場にいたとすれば、その奪い合いの光景は今でも見れるわけです。

これはたまたまあなた自身だけの経験ではないかと言われそうなんですけれども、ではつい最近の例を言うとですね、イギリス・マンチェスターの中国の領事館で抗議している香港人の髪の毛を引っぱって中に引きずり込んで、蹴ったり殴ったりしたのは誰かと。それは中国のマンチェスターの総領事なんですね。つまり外交官の中のエリートです。しかもイギリスに派遣されている外交官です。ある意味で西側のことをよく勉強した国の代表なんですね。その国の代表が最低限の礼節、外交官としての矜持も完全に捨てちゃって、抗議をしている香港人の髪の毛を引っぱったり殴ったり蹴ったり、非常に野蛮な行為をやる。なぜか?なぜそれをやっているかと言うと、つまりそこまでやらないと、今度自分の国の習近平の機嫌が悪くなっちゃうんですね。要はデモ隊によって習近平を揶揄する絵を置かれて、そこまで過激な行動に出ないと、今度自分の首が飛ぶかもしれない。だから面子の方が大切なのか、あるいは自分のこれからの出世という実利の方が大切なのか、この2つから彼らは躊躇せず実利を選ぶんです。

面子を重んじるというのは、実は悪いことではない。実際にはいいことなんです。面子を重んじるということは名誉を大切にするということなんですね。日本の侍、武士には「武士は食わねど高楊枝」という言葉があるんですけれども、実際はお腹が空いているのに、食べていないのに、楊枝を使ってまるで満腹のように見せるんですね。それは武士としてのプライドを保つためにわざと、お腹空いていないよ、もう一杯だよ、と見せる。それが面子を重んじる行為なんですね。つまり礼節を重んじる、そして名誉を重んじる。しかし中国はそれとは関係ないですね。
ではなぜ中国はそれを断ったのか。タダでくれるんでしょう? しかもドイツの大統領が習近平に電話して、億単位以上のビオンテックのワクチンを提供すると申し出た。ビオンテックとは日本で言えばファイザーのメッセンジャーRNAのワクチンで極めて効果があるワクチン、重症化しないという効果が極めて高いワクチンなんです。それを億単位でタダで提供する。アメリカ政府もそのオファーを出しているんですけれども、しかしなぜ断ったのか。

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