タキトゥスの罠に落ちた習近平

台湾

どんな人にとっても信用がとても大切なことですね。だからこそ約束を守るということは非常に大切なんですね。これをやると言ったら、必ず時間どおりにやる。時々我々も約束を守れない時があるんですね。例えば時間を守れなかったり、電車が遅れるとか、途中で事故があったりとか、たまにこういう言い訳は受け入れられるんですけれども。何回も何回もそれをすると、お前だけよく電車に遅れるなあと言われてしまうわけですね。ですから、たとえ理由があっても、約束を守らないということはやはり信用を失ってしまうわけですね。一般人であればそれほど影響はないですけれども、しかし一国の独裁者であれば、信用を失うということは場合によっては命取りになってしまう可能性もあるんですね。

たとえば独裁者の場合は、いいことをやったらご褒美をくれる。しかし独裁者にとって一番肝心なことは、怖いと思われることなんです。怖いと思われなければ、独裁者の権威が地に堕ちるんですね。怖いと思われるために何をするか。間違ったことを絶対容赦しない、絶対バッシングをする。独裁者がちょっとしたご褒美をあげると、部下は心から服従するんですね。独裁者の統治術の1つは利益、1つは恐怖ですね。その中で恐怖の方が利益よりもウエイトが重いんですね。では習近平はどうか。習近平は間違いなく大独裁者です。

しかし習近平は最近、独裁者にとってあまり相応しくない2つのことをやったんです。1つは何か。弾圧しなかったのです。白紙革命の若者たちは「習近平退陣しろ」と要求したんじゃないですか。これは独裁者を直接攻撃するようなスローガンです。その時、「習近平退陣しろ」と言われても、まあいいじゃないか、若者たちの不満があるのだから、民主国家であればそれでいいんですけれども、独裁国家の場合はこのような寛容的な姿勢を出すと、抗議しても弾圧されないと―まあ実際にはピンポイントで弾圧しているんですが―周りから見れば、弾圧していないじゃないかと思われます。そうすると独裁者の権威に傷がつくんです。もう1つは、白紙革命の要求を呑んでしまったわけです。バッシングをせずご褒美をあげてしまったんです。普通なら独裁者らしく弾圧してしまえばいいのではないかと思われます。独裁者らしくない態度に出たわけです。まあまあいいんじゃないか、彼らも不満がある、などとこんなに寛容な独裁者がいると、独裁者は独裁者ではなくなってしまうわけですから。これは非常に独裁者の名誉のために本当にやってはいけないことですね。しかし習近平はそれだけではないんです。このゼロコロナ対策の大転換をしました。

今、一般の国民はどのようにこの大転換を表現しているか。今まではみんな「封鎖は嫌だ、封鎖を解除しろ」と言っていたら、「全部解除してやる」となったのです。しかし、中国人は感謝、感謝で「ようやく我々の要求を聞いてくれた」というのではないのです。彼らはなお不満なんです。それをどのように表現しているかと言えば、中国人はそもそも水遊びをしない、というのも水を極端に怖がっているから、中国の親は子どもに絶対に水遊びをするなと、かなり厳しく水遊びを禁止するのです。だから今までは川に近づいちゃいけないと、川に近づいたら罰を与えると。喉が渇いたから川に水を取りに行こうかなと思っても、「ダメ」。洗濯しに行こうと思っても「ダメ」。水に接近することを一切禁止します。それから一転して「いや、我々は水が欲しい、水が欲しい」と言ったら、今度そういう人たちをいきなり川の中に投げ込むということ。「水を飲みたいでしょ、どうぞ」ということで放り出されるんですね。そして逆にその時は「泳ぐのは体にいいんだから泳げ」ということで、泳ぐ練習もしたことがないのに、直接水の中に落としてしまうということ。それが今までのゼロコロナ対策から「コロナだらけ」への政策転換ですね。中国ではそういうことはよくあるんですけれども、上が「ちょっとスピードを上げよう」と言うと、下の人間はアクセルを目一杯まで踏むんですね。「スピードをちょっと落として」と言ったら、ブレーキを目一杯踏むということなんです。これは上と下は逆なんですけれども、しかし今度は正に上のトップのほうがそれをやったんですね。シャワーを浴びて、水しか出ない、寒い寒いと言ったら、今度は80度くらいの熱湯に変えるというような政策を今やっているわけですね。だから当然、何の対策もしないで一気に開放すれば一気に感染が広まるんですね。

一気に感染が広まると一気に死亡者も出てくるんですね。日本でも報道されているように、今の北京の一番混雑している所は、台湾ボイスでも紹介したように1つは病院、1つは薬局。実はもう1か所あるんですよ。もう1か所を紹介し忘れたんですけれども、どこかと言うと火葬場なんです。その火葬場は下手すると1週間待ちなんです。1週間というのは、連絡が来るまで家で待っているというのではなくて、火葬場の前で車の中で待っている。今、北京のどの火葬場でも長蛇の列に並んでいるわけです。車の列ですね。車の中に遺体が積んであるわけです。そのぐらい死亡者数が増えているんですね。北京には火葬場はいっぱいあるのですけれども、平均にして1か所の火葬場で処理できる限度はせいぜい30体から40体なんです。しかし今は1日200体の遺体を焼却しなければならないですね。これを見ても分かるように6倍から7倍くらいの死亡数が出ているわけです。

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