中間選挙後の米国情勢

台湾

藤井:台湾ボイスの会員の皆さん、こんにちは。藤井厳喜です。今スタジオ建設中ですが、ほぼ完成したということで今日は林建良さんをスタジオにお招きして、初めてリアルな対談という運びになりました。林さん、よろしくお願いします。

林:よろしくお願いします。

藤井:以前はよく対談しましたが、台湾ボイスが始まってからはずっとリモートになってしまい、台湾ボイスでリアルにお会いするのは今日が初めてになります。

林:そうですね。非常にフレッシュな気持ちです。

藤井:フレッシュな気持ちで、そしてお互いに元気な顔で対談できて良かったと思っています。早速、本題に入らせていただきます。今日は前半を私がお話しさせていただき、Aセクションではアメリカの中間選挙の総括、それからBセクションでは最近の国際情勢を大きな図式で捉えるとどういうふうに考えられるのかというあたりを深掘りしていきたいと思います。こちらは『ワールド・フォーキャスト』と部分的にダブるところもありますが、ダブルの会員の方にはお許しを頂きたい。それで後半は林さんにまずはチャイナの情勢、それから台湾について語っていただきたいと考えています。

林:はい。

藤井:アメリカの中間選挙ですが、私が期待したほどのいい結果は出なかったというのが率直な感想です。これはよく言われるレッドウェーブ、つまり共和党の大きな波は確かに起きていたと思います。事前の世論調査では、保守系の世論調査でも、リベラル系の世論調査でも、共和党がかなりリードしていたからです。下院では共和党がかろうじて過半数を取ったものの、残念ながら2020年のアメリカ大統領選挙で起きたことと似たような不正選挙や選挙妨害が各地で確認されました。これによって共和党は下院の議席数を20ぐらい減らしたのではないかと私は考えています。上院に関してはアリゾナ州が決まったので、民主党が50議席を死守する形となり、民主党50議席、共和党50議席という結果に着地しました。大手メディアは「共和党50、民主党50で、副大統領の1票を入れれば民主党が上院の過半数を確保した」という言い方をしていますが、厳密にいえばアリゾナ州の選挙結果がまだ確定しておらず、それからジョージア州が12月上旬に決選投票を実施するということで、まだ確定していないというのが本当のところだと思います。非常に残念だったのは、今回も2020年の大統領選挙と同様にさまざまな不正が行なわれたということです。2020年のアメリカ大統領選挙では特に郵便投票の部分と集票機械を使って外部から票数が改竄されたという、二つの大きな問題がありました。これについては共和党がいろいろと真相究明をやってきたわけですが、これにはタイムリミットがあり、残念ながら2021年1月6日までには修正できなかったという経緯があります。最も大きかったのは、いくつかの州が「不正選挙があったから無効だ。再度審査してくれ」と言ったことに対して、2020年12月に連邦最高裁が門前払いしてしまったことだと思います。唯一ちゃんとした結果が出たのがミシガン州で、今年になってからミシガン州の最高裁が2020年の大統領選挙は無効であるという判決を下しました。これは州の最高裁ですから、連邦最高裁とは別の判断をしたということになります。しかしながらミシガン州における大統領選挙が無効になったとはいえ、バイデン政権が誕生してしまっているために修正することはできなかった。弁護士がこういう判断について「ジャッジメント・プルーフという言葉がある」とおもしろい表現をしていました。ジャッジメント・プルーフというのは、ジャッジメントは下されたけど、それは無効であるという意味です。

林:なるほど。

藤井:それはともかく、結局のところ、どこの州でも不正選挙の責任者が誰で、どのように票数が誤魔化されたのかということは追及できず、その責任者を処罰するというところまで至っていないのが実情です。それに最も近づいたのが、今回も話題になっているアリゾナ州ではないでしょうか。アリゾナ州の州議会は票数のインチキがあったこと、集票機械でどのように不正が行なわれたのかというところまで突き詰めたものの、責任者を追及するところまでは進展しなかった。「それを調べましょう。もっと審査しましょう」と言っているうちに、中間選挙になってしまったということです。そして11月8日の中間選挙では、特にトランプ支持者の多いカウンティにおいて選挙管理委員会が有権者にシャープペンと青のサインペンを配って、投票用紙に記入するように言っていた。ところが、シャープペンや青のサインペンでは投票機械にちゃんとスキャンされないわけです。それで共和党支持者のあいだで「これはおかしいぞ」ということになって、「黒のボールペンを持っていきましょう」という声がSNS上で呼びかけられたくらいです。特にアリゾナ州最大のカウンティであるマリコパ郡では223か所の投票所のうち、3分の1に当たる70か所ぐらいで投票機械が故障してしまいました。トラブルが発生したのは共和党支持者が多いところばかりです。こういうことはアリゾナ州だけではなく、各地で起きていました。日本だと投票箱に票を入れるだけで終わりですが、アメリカでは個人がスキャニングの機械に通すことになっています。投票所で「機械が機能しないから待っていろ」という話になって、数時間も待たされたという例があったそうです。投票日は火曜日ですから、仕事に行かなければいけない人、病院に行かなければいけない人もいて、なかには投票所まで来たのに帰ってしまう人もいた。さらには待たされた挙句に時間切れで投票できないようなところもあったと聞きます。全米でそういうことが起きていた。共和党が優勢なテキサス州では締め切り時間を延長しましたが、テキサス州以外のところでは「投票の列に並んでいたけど、時間切れで投票できなかった」という事例もあったということです。そういうひどいことが起きていたために、トランプ前大統領は彼のSNSのTruth Socialで盛んに抗議していました。例えばデトロイトでは共和党支持者が投票しようとすると、「あなたは投票できません」と言われたみたいです。「えっ!?」と返事をすると、「あなたは郵便投票で投票したことになっている」と言われた。「いや、俺は郵便投票していないよ」と抗議したものの、選挙管理委員会に言われて引き下がるしかなかった。そういうようなことが全米で頻繁に起きていたということです。私は共和党が245議席ぐらい取れると予想していましたが、残念ながら遥かに少ない数で着地してしまいました。もちろんまともな投票所はあります。しかしながら今回の不正選挙が起きたとされているのは、前回の大統領選挙で不正が起きた州と同じような州ばかり。アリゾナ州、ジョージア州、ペンシルベニア州、ミシガン州など、いわゆるスイングステートで大事なところだった。要するにそれらの州の選挙管理委員会の体制を完全に改めることはできなかったということです。現場の人からは「不正があった。おかしいじゃないか」という声がたくさん出ています。これはアリゾナ州の話になりますが、票を通してスキャニングできない場合、「後で判定しますから、こっちの箱に入れておいてください」と言われ、ボックス3という箱に入れさせられたみたいです。共和党支持者が多いところではそういうことになっていて、どうもその箱がちゃんと数えられたという確証がなく、そのまま廃棄されてしまったのではないかと疑われています。

林:はい。

藤井:アリゾナ州は特に州知事選が大事で、トランプが支援するキャリー・レイクさんという候補がいろんな世論調査で圧倒的にリードしていました。ところが対抗馬の民主党ケイティ・ホッブスさんに敗れました。両方とも女性です。アリゾナ州では2020年の選挙で多くの不正行為があったと州議会が突き止めていました。アリゾナ州の州務長官を務めていたホッブスさんはその選挙の最高責任者を務めていた人物です。その彼女が今度は州知事選の民主党候補者として出馬してきた。さらに今回の選挙においても彼女が選挙管理の最高責任者になっています。要するにプレイヤーがアンパイヤをやっているようなものです。日本語には行司がまわしを締めているという表現がありますが、そうなっているわけですよ。キャリー・レイクさんが世論調査で圧倒的にリードしていたにもかかわらず、あるところの出口調査では十数%しか票を取っていなかったはずのケイティ・ホッブスが僅差で勝利したという結果になった。票の数え直しという話も出ています。州によって違いはあるものの、アリゾナ州は0.5%の票差のときは自動的に票の数え直しをすることになっていて、票差1%以内のときは負けている側の候補が費用を負担すれば数え直すことができるという仕組みになっています。しかしながら数え直しの責任者はホッブスさんだということです。

林:なるほど。

藤井:選挙をやり直すべきじゃないかという声も出ていますが、結局は臭いものに蓋をされてしまうかもしれない。それからペンシルベニア州でも似たようなことがありました。前回の大統領選挙でも最初に不正行為が疑われたのがペンシルベニア州です。投票監視員のなかで共和党の人たちだけが投票所から追い出され、そういった状況下で不正行為が行われていた。本来、投票所から排除された時点で選挙管理法違反です。だけど、それで押し切られちゃった。このときの責任者がペンシルベニア州の州務長官だったシャピロさんです。この人が今回のペンシルベニア州の州知事選に民主党候補として出馬しています。それで以って共和党の州知事候補がペンシルベニア州選出の上院議員のマストリアーノという人で、前回の不正選挙を最も追及していた人物になります。要するに今回の選挙ではシャピロさんがアンパイヤをやりながらプレイヤーもやっているということ。シャピロさんやホッブスさんからすれば、他の人が州知事になったら困る。なぜなら共和党の候補たちが前回の不正選挙の原因を徹底的に追及すると言っているからです。それをやられてしまうと、シャピロさんもホッブスさんも自分が起訴される立場に陥ってしまうわけですよ。

林:はい。

藤井:だから自分の巨悪を隠ぺいするために自分自身が知事選に出てきたということです。本来であれば、州務長官が出馬する場合には選挙期間中は州務長官の職を休職にするというようなルールールがあればいいと思いますが、残念ながらアメリカにそういう法律はないようです。

林:そうですね。

藤井:本来は「選挙管理は第3者に任せます」と言ってから、出馬するのが職業倫理だと思います。公正な選挙だと思います。そういったことがまったく無視されているということです。全米のなかでも特にこの2州はひどい。私も「共和党の側が選挙制度をどこまで正せるかが焦点」とずっと言ってきたわけですが、制度改革とか、責任者を追い詰めるとか、2年前の不正を徹底的に正すところまでには至らなかった。それで今回も同じようなことが起きた。民主党はかろうじて下院を取りましたが、民主党と共和党の議席数がそれほど変わらないことから、大きな方向転換はなかなか難しいのではないかと考えています。後でお話ししますが、もちろん共和党のなかにも旧エスタブリッシュメントがいるわけです。

林:はい。

藤井:共和党のエスタブリッシュメントは草の根保守のトランプ派を敵と考えています。彼らからすれば「それ見たことか。2回も選挙に負けた」ということで、トランプを引きずり下ろして旧共和党に戻ろうという機運が出てきてしまっています。それからミシガン州ではグレッチェン・ホイットマーという民主党の州知事が再選したんですが、ここの開票結果を見ていると、2年前に話題になったバイデンジャンプが見られます。ある時点で票数がビョンと伸びている。そんなバイデンジャンプが2回ぐらいありました。またニューメキシコ州の州知事選挙、さらに下院第1区、第2区の開票結果にも、そのような兆候が見られます。票というのは累積的に増えていくものですから、抜きつ抜かれつということはあるにしても、票が増えたり減ったりするということはない。減るということはおかしいですよね。

林:そうですね。

藤井:開票結果を見ていると、増えたり減ったりという現象が何か所も出ていることが分かります。訳の分からないことになっている。これはグラフが小さいけど、ドンと増えたり、今度は減ったり、そういうようなことが起きていて、これはまともな選挙ではないなということが随分出てきてしまっているというのが分かると思います。バイデンは「アメリカのデモクラシーの正統性を証明した」と言いました。しかしながら、これは2年前の不正選挙と同じことをやってのけて、デモクラシーをまた誤魔化すことができたということだと思います。民主党はやってはならないことを2年前にやってしまった。麻薬に手を染めてしまったのと一緒で、やめられないわけです。民主党は選挙結果がまともに反映されたら、大敗なんですよ。

林:はい。

藤井:選挙結果がまともに反映されたとして、新しい共和党の候補者が州知事や州務長官となり、彼らが「前回の不正選挙をやった奴は誰だ」と責任追及を始めたら、民主党から犯罪者にならなければいけない人が大量に出てきてします。だから民主党からすれば、誤魔化し続けるしかないということではないでしょうか。それから大統領選挙にしても、トランプが再選されたり、その流れを汲む人物が大統領になったら、どうなるでしょう。ロシアゲート事件はそもそもでっち上げで、トランプは無罪だったということが分かっています。「じゃあ、でっち上げた責任者は誰だ」と責任追及が始まり、最終的にはオバマ大統領まで追及の矛先が向かうということになります。ですから民主党は今、徹底的に誤魔化すことに終始しています。

林:はい。

藤井:私はこれを世界的な問題だと捉えています。アメリカでそういう不正行為が行なわれていることが日本や台湾に関係ないのかというと、そういう問題でもない。アメリカは自由とデモクラシーのチャンピオンの国。その国の選挙を今の権力者が自由に捏造できるということになれば、アメリカ人がかつてバナナリパブリックと嘲笑していた中年米の国々と状況は変わらないじゃないかということになってくる。形はデモクラシーだけど、独裁者が最高権力者とも、最高裁判所とも仲が良く、全部を仕切っているという状況です。反対派が出てきたら、インチキ選挙で潰してしまう。アメリカ人はそういう国々をバナナリパブリックだとからかっていましたが、今まさにアメリカ自体が巨大なバナナリパブリックになってしまったのではないかということです。アメリカのこういう状況を見て、最も喜んでいるのは習近平とプーチンだと私は思うんですよ。

登録は簡単3ステップ
過去の配信動画が見放題
最新情報をお届け

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

月間ランキング

  1. 1

    秦剛解任の裏

  2. 2

    中国外交部の異変

  3. 3

    日経の大罪

  4. 4

    バイデン政権の対中ゾンビ外交

  5. 5

    「農管」・ヤクザ顔負けの中国農業警察

  6. 6

    安倍晋三のパンチ

  7. 7

    ワグナル反乱で震え上がる習近平

  8. 8

    台湾問題を国際化する習近平

  9. 9

    真実と嘘を織り交ぜたペテン師の手法

  10. 10

    大人の情報学

Taiwan Voice

Taiwan Voice

日米台研究所理事・林建良先生と国際政治学者・藤井厳喜先生による、台湾の視点から、最新の国際情勢を分析・解説した動画が届く会員制のサービスです。大手メディアが報じないため、実態の分からない中国情勢の分析を月1回、実例を上げながら分かりやすくお届けします。

最近の記事

  1. 秦剛解任の裏

  2. バイデン政権の対中ゾンビ外交

  3. 中国外交部の異変

TOP