独裁者のジレンマ

台湾

中国の白紙革命はあっという間に消えてしまったように思えるんですけれども、実際には11月の26日、27日の二日間に集中して、中国の各大学、そして主要都市で、若者を中心として中国政府のゼロコロナ対策に対する抗議デモはあちこち行われていました。

瞬時に世界的に広まったけれども、なぜかあっという間に中国国内で消えてしまったように見えます。消えてしまった理由は何かと言うと、中国政府の各地での厳戒態勢、これが一番の理由です。二番目は、都合よく江沢民が11月30日に亡くなってしまった。その発表によって、中国のネットでは江沢民追悼一色になったわけですね。実はその江沢民追悼というのも、ある意味で、アンチ習近平という意味なんです。なぜかと言うと、江沢民は決していい人間ではないです。やはり独裁者なです。しかし江沢民は仮面を被っている悪魔なんですね。習近平は仮面を被っていない悪魔です。両方比較してみれば、何となく江沢民の方が良く見えるようになっています。ですから江沢民への追悼というのは、ある意味で、逆に習近平を批判するということです。そのニュースが国内的にも国際的にも、基本的には江沢民一色というふうになって、自然とこの若者による白紙革命は、たとえ散発的に別の都市でやっていても、基本的には第一にニュースにならない、第二にやはり中国政府の動きが速かった。たとえばネット上に拡散できなくなっている封鎖ですね。それから三番目はやっぱり警察の鎮圧というのは、非常に有効でした。

この白紙革命というのは、中国国内ではたったの2日間だけのように見えるんですけれども、本当に全く効果がなかったのか。もちろんそうではないです。非常に効果がりました。全世界に広がったということがまず一つ大きな効果です。世界中の中国人留学生を中心とした白紙革命はまだ続いているわけです。しかし一番の成果とは何か。習近平本人が譲歩したこと。習近平が譲歩するということは、これはやっぱりビッグニュースです。なぜかと言うと、習近平という独裁者は、基本的には習近平政権のこの10年間は、一歩も譲歩しないというのが彼のスタイルです。どんなことがあっても譲歩しない、どんな圧力があっても貫くというその強面のイメージを維持するためにも、絶対に譲歩できないという独裁者のイメージができているわけです。ところが彼は12月1日に欧州連合のシャルル・ミシェル大統領と会談をした際に、恐らくミシェル大統領から言及したと思いますが、この若者の抗議デモである白紙革命のことです。そして習近平はなんと答えたかというと、この3年間のゼロコロナ対策によって、このコロナによってやはり人々が不満に思っている、と彼が認めたわけです。これはかなり大きいです。そして彼は言い訳をするような、これからの政策を転換してもいいようなことを仄めかしています。どのように言ったかというと、オミクロンの致死率はデルタ株よりも低いのでもう解放していいという意味のことを言っているわけです。もちろんオミクロンがデルタ株よりも致死率が低いのは前々から知っているわけです。だからもっと前の段階で解放すればよかったんじゃないかと思われるんですけれども、しかし現に今、中国の主要都市、北京とか上海とか深圳とか広州とかでゼロコロナ対策はかなり緩めました。例えば広州では、今まで食堂やレストランでの食事は禁じられていたわけです。そして電車に乗るとき、病院に行くときも、必ずPCRの陰性証明が必要です。今度電車に乗る際にはPCR検査がなくてもいいということです。そして、たとえば陽性になったら基本的には強制的隔離です。しかも強制隔離というのは、集中的に隔離されるところに移動させられるわけです。自宅で隔離されるということは、基本的には許されません。今度は陽性であっても自宅で隔離すればいいと。だからこのゼロコロナ政策をかなり緩めたわけです。恐らくこの段階で緩めて、最終的にはもっと緩めて、全面解放になっていくんじゃないかと思います。習近平はもちろん、オミクロンの致死率が低いから解放したのではなくて、基本的にはこの白紙革命が効いて、全世界に広がって、彼にとってもやはり解放せざるを得ないような事態になったんですね。ところが、この間台湾ボイスでも紹介したように、これはあくまでも習近平政権の硬軟両用の両手戦略なんですね。両手戦略とは何か。両手戦略とは一方では妥協するんですね。一方ではもっと厳しく締め付けるということで、両方やっていく。

彼は三つのことをこれからやろうとしている、もしくはもうやっている。一つはこのゼロコロナ対策の緩和政策。一点目ですね。二点目はこのデモをやったこの白紙革命に参加した若者へのピンポイント鎮圧、あるいはピンポイント弾圧をするんですね。三番目。今回の白紙革命は外部勢力が引き起こしたものという責任転嫁をする。この三つの方法ですね。一番目。この緩和の際には、やはりいろんな副作用が出てくるんですね。その前に、このゼロコロナ対策は習近平体制にとっては全く意味がなかった、全くプラスの面はなかったのか。もちろんそうではないですね。自分にとってプラスにならないことは、最初からやらないですね。ですから習近平体制の立場で見る場合には、少なくともこのゼロコロナ対策には三つの効果があった。しかももう完成しており、これからも続く効果が三つある。一番目の効果とは、このゼロコロナ対策はまさに疑似戦時体制になっているわけですね。疑似戦時体制とは何か。戦争のときは全ての国民の自由が制限されるんですね。そして全ての国の資源が国のために動員されるわけですね。戦時体制は戒厳令よりも厳しいです。戒厳令の場合は全ての人々を自宅に閉じ込めるということはしない。夜間外出禁止令があるとしても、100%外に一歩も出てはいけないということは、基本的にはしないですね。しかし今回のゼロコロナ対策は全ての人間の外出を禁止するんですね。ひどい場合は扉に溶接したり、チェーンでロックしたりして、外に絶対出られないようにする。買い物もできないし、病院に行くことも許されないし。食べ物はどうするか。食べ物は配達に頼るしかない。これは戒厳令よりも厳しいですね。つまり国民全員を拘束する。非常状態にするということで、ある意味一つの国としてのストレステストなんですね。このストレステストに耐えられれば、戦争の時も基本的には同じような状況なので、一つの演習のようなものなんですね。国民にここまで強制できれば、戦争に突入してもかまわないということで。これは一つの戦時疑似体制。これが一点目ですね。

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