習近平政権の予兆・中国の医療崩壊

台湾

約3年間続いたゼロコロナ対策を経て、習近平政権はいきなり解除して今までの制限をほぼ取っ払ったんですね。その理由は以前も説明したように、最大の理由は白紙革命です。しかし、これほどの大独裁者がちょっとした学生たちの抗議デモにすぐ妥協してしまうというのは、ちょっとがっかりですね。僕も習近平の支持者の1人なんですけれども、恐らく習近平の支持者からすれば、少なくとも毛沢東のように3000万人も殺したというのじゃなくても、鄧小平のように戦車を出して学生を鎮圧するとか、そのぐらいの剛腕を見せなければいけないじゃないのと恐らく彼の支持者たちはそう思ったと思うんですね。しかし、彼が妥協するというのは、学生が怖い、あるいは自分の国民を鎮圧したくない、というより、背後に1つ彼の事情があるんですね。

どういう事情かというと、3期目の党の総書記としては10月に決まったんですね。みんなから見れば権力がかなり固まって、彼の権力基盤は盤石のようにかなり安定しているように見える。これからはもうやりたい放題で、どんなことでも彼の意向に逆らうことはできない、と思われたのですけれども、実はそうではないですね。なぜかと言うと、10月に決まったのは共産党のポストなんですね。もちろん中国の場合は国より党の方が上なんですね。つまり党が行政を管理する。しかし党が行政を直接管理するというよりは、行政にはまた行政の機関があるんですね。例えば各省には省長というトップ、行政的な存在がある。しかし各省の上にまた党書記が存在するわけですね。党の書記が省長よりもワンランク高いということなんです。しかし実際の実務的レベルでは党が行政を指揮して、行政の官僚やトップが行政をやっていくという仕組みなんですね。そして今、1つの空白期間が生じているんですね。どういう空白期間かと言うと、党の人事が決まったけれども、行政の方はそのままなんですね。例えば内政の一番の責任者とは誰か。それは国務院の総理である李克強ですね。あるいはプラス、下の何人かの副総理、例えば筆頭副総理である韓正とか、あるいは胡春華、孫春蘭とか。彼らは今度全員引退してしまうのです。全部引退しちゃうのですけれども、しかし彼らはなおそのポストに就いている。ある程度の権限を持っているということなんですけれども。地方も同じですね。だから習近平は今度党のトップにはなったけれども、地方、特に行政の人事にまで自分の人間を入れたりすることはまだできていないです。党の書記には、例えば上海とか広東省とかには自分の意中の人選をもう配置しているんですけれども、下の人間は今のままです。下の人間のポストはいつ頃決まるかというと、来年2023年の3月の全国人民大会で決まるわけですね。その時初めて党の人事も行政の人事も全部自分の意中の人事になるということ。

この時期になぜ学生たちを鎮圧しないかというと、2つの理由があるんですね。1つ目の理由は、地方の党以外の人間をあまり信用していない。ああゆう人たちは結局、今回の第20回共産党大会で権力闘争に負けた人間なんですね。習近平派ではない人間がまだいっぱいいるわけですね。そのいっぱいいる人間は必ずしも習近平の言う通りに動かない。しかしこれから2番目の理由が出てくる。鎮圧する際に、中央から何らかの資源、人力資源とか経費の資源を地方に出さなければいけないですね。例えば武装警察の派遣。武装警察は今、軍事委員会が管轄しているんですけれども、この武装警察をそっちへ派遣したらその指揮を誰が取るか。当然その地域を一番理解しているトップ、あるいは行政担当者が指揮を取るわけですね。ただしこの人的資源、物理的資源がそっちに行くと、今度自分のポストに不満を持っている習近平派以外の人間が叛乱を起こすかもしれないという心配があって、結局、今回習近平はこの白紙革命の抗議を受けてすぐに妥協したという形になったんですね。12月に入ってほぼ全面的にゼロコロナ対策の制限を開放したんですね。今までの物凄く厳しいロックダウンからほぼ自由になった。医療機関のスタッフの場合はPCR検査が義務付けられているのですけれども、基本的には今までのゼロコロナ生活からほぼ自由になったんですね。そうなると日本でもかつてロックダウンした経験がありました。例えば東京や地方都市で。ロックダウンを解除されると普通の人間はどうなるか。普通の社会生活がどうなるかというと、リベンジ消費ですね。今まで何日も閉じ込められて自由を失って、今度自由になったらみんな繰り出すわけですね。だから日本ではその時、Go to eat とか Go to travelとか、居酒屋やレストラン、観光地が一時的にこのリベンジ消費によって賑わっていたわけですね。ところが今回開放した後の中国はどうなのか。

まず北京を例に話しましょう。北京であれば繁華街に大勢人が繰り出して、物凄く混雑しているのではないかと思うのですね。しかし蓋を開けてみると北京のどの町でもがらんとしているわけです。人影はほとんどいないんですね。人が集まっている所はどういう所かと言うと、病院と薬局。病院と薬局に殺到しているわけですね。なぜかと言うと、一旦開放してしまうと、コロナの感染者が急激に増えたのですね。ところが中国政府の統計では、開放して日に日に感染者数が減っているわけですね。北京にしても全国にしても、日に日に減っているわけです。中国人はそもそも中国政府の出したデータをあまり信じていないんですけれども、しかしこの中国政府のこの宣伝は自分にとって都合の悪い数字をできるだけ低く抑えようとするという姿勢には、逆に不信感を募らせてしまうわけですね。なぜかと言うと、開放して患者の数が減っていれば、開放した方が安全ではないですか。開放した後の方が安全ならば、この3年間のロックダウン政策とは何だったのかと、やっぱり言われるんですね。中国人だってそんな馬鹿ではないんですけれども、この数字は明らかに嘘なんですね。中国人がどう考えているかというよりは、中国にいる西側のジャーナリストが自分の目で見た現象はどうなっているのかを紹介したい。これはNBCニュースの名物記者、Janis Markey Frayerのツイッターなんですけれども。彼女の12月9日のツイッターにはこう書いてあるんですね。この48時間以内に彼女が見た北京というのは、zero coronaからcorona everywhereになったと。もともとコロナがなかった、しかし48時間経ってコロナだらけになった。だから中国人の感じ方としては、自分の周り近所みんなコロナ感染者になってしまっているわけですね。しかし中国政府の宣伝としては、12月1日まで「コロナはとっても怖い」「コロナはただの風邪だとかインフルエンザのようなものだとか言う西側の宣伝は全く間違っている」「コロナにかかるとひどい後遺症が残るし、大変なことになる」と。ですからここまで厳しい措置を取らなければいけない、とつまりゼロコロナ対策を正当化するために、「コロナは怖い」と中国のあらゆる医療専門家がそう言っているわけですね。中国の医療専門家、医療の権威というのは、常に権力者の腰巾着なんですね。この腰巾着は、権力者がこう言えと言えばこう言うんですね。そして12月1日から彼らは一変して「コロナは怖くない」と、特にこのオミクロン株は全然怖くない、病気とすら言えないと言っているわけですね。ではオミクロン株は12月1日から突然出たのかと。オミクロン株はもう1年間くらい出ているわけですけれども、この1年間のゼロコロナ対策は何だったのかと言われそうですね。しかし、中国で一番の医学の権威とは誰かというと、これはもちろん習近平でしょうね。習近平が怖いと言えば怖い。習近平が「この病気は厳しいゼロコロナ対策で抑えなければ抑えきれない」と言えばそうなんですね。そして12月1日から、「実はこの病気は怖くないんだ、病気ですらない」と言えば、中国の医療専門家はみんなそう言うんですね。だから今までにも習近平外交思想とかがあって、中国の外交の一番の専門家は習近平ですね。そして習近平の経済思想とかもあって、一番の経済の専門家は習近平ですね。そして習近平の軍事思想とかまであり、一番の軍事専門家も習近平ですね。これから恐らく習近平医学思想が出てくるかもしれませんね。だからこれからの中国の医学部の学生は、習近平医学思想を学んで患者を治療することになるんじゃないかと思いますけれども。機会があれば、僕も読んでみたいですけれども。これで一般の中国人はどうなるかと。昨日までは「怖い」、今日から「もう大丈夫だ」と言われても、この3年間の厳しい宣伝の中で、中国人は怖いと思っている人が多いわけですよ。今の北京の気温は零度以下ですよ。零度以下の時に医者に診てもらうために、屋外で6時間も並んで待っているような状態ですね。どんなにオミクロン株コロナは病気ではないと言われても、6時間も零度以下の所で並べば病気になっちゃいますよ。中国人は自分の命が一番大切ですから、病気になる前に薬をいっぱい飲むんですね。熱冷ましとかいろいろ飲んで肝臓が悪くなっちゃって、結局肝不全になってしまうというケースもたくさん出てくるんですね。ですから今の中国は、開放して、今まで散々コロナ対策によって経済が悪くなった、開放しないと経済がダメになっちゃうんじゃないかと。じゃあ開放すれば経済が一気に良くなるかと。そうではないですね。開放して結局中国の株は下がったんですね。中国の株で上がっているのは2種類だけ。1種類は薬品メーカーですね。薬局に殺到してどんな熱冷ましでも痛み止めでも風邪薬でも、みんな買い漁っているわけですね。2番目に株が上がっているのは葬儀屋なんです。葬儀屋の株が大上がりなんですね。これが現実なんです。

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