2024年台湾総統選・戦争と平和の選択になるか

台湾

藤井:それでは今日の第3セクション、C『2024年台湾総統選・戦争と平和の選択になるか』ということで、お話しいただきます。日本にとってもシリアスで、超重大な話題になります。この辺について詳しい話をお願いできますか。

林:2024年の台湾総統選は親中反米の指導者を選ぶか、親米反中の指導者を選ぶかということが鮮明になるのではないかと思います。もちろん過去にもそういう側面はありましたが、それ以上でしょう。もともと国民党は親中でも、反米でもなかったわけです。例えば国民党は2000年までは李登輝が率いていました。李登輝政権は親米かつ反中です。それ以前は蒋経国政権ですが、蒋経国も反中国共産主義ですから、親米かつ反中でした。さらに遡ると蒋介石政権も実は親米かつ反中です。そして蒋介石政権と蒋経国政権は国内向けに反日教育をやっていましたが、政策的には親日路線だったと考えていいでしょう。台湾では親米と反日は同時に存在できないため、親米であれば基本的に親日ということになります。そして陳水扁の8年間も対外的に李登輝の政策を踏襲しましたが、馬英九政権時代に反中から親中路線に流れが変わりました。反米かというと、そうでもなかったと思います。ただし馬英九本人は明らかに反日でした。

藤井:馬英九は反日だったと私も思います。

林:尖閣諸島で漁船沈没事件が起きたとき、馬英九政権の当時の行政院長である劉兆玄(りゅうちょうげん)が「日本と一戦を交えることも辞さない」と発言したことがありました。そこから国民党政権は狂っていきました。先ほども説明したように親米と反日は基本的に両立しません。なぜなら親米反日であれば、アメリカの安全保障政策と矛盾することになるからです。台湾の安全保障というのは日米同盟が一つの礎であって、台湾が反日に傾けば日米同盟が台湾問題に対処できないことを意味します。だから馬英九政権のときは方向性が非常におかしくなっていって、それまでの反中路線から親中路線に転換しました。そして中国とECFAという貿易協定を結び、中国側に全面的に傾いていってしまったわけです。当時はグローバル化の時代でアメリカも日本も中国と商売したいと考えていましたから、宥和路線の日米にとって馬英九の親中路線はそれほど問題にならなかったと言えるかもしれません。

藤井:当時は、許容の範囲内という感じがしました。

林:そうですね。安全保障面においては確かに問題ですが、もっと大きな流れのなかでその辺はちょっとくらい目をつぶってもいいという考えがあったのではないかと考えられます。おそらく軍関係者は危惧していたでしょう。馬英九政権時代には台湾軍の内部でスパイが多発していました。これは、ある意味で馬英九政権がそれを容認していたという部分もあったかと思います。そのなかでアメリカの軍関係者がしきりに「それじゃあ、ちょっと困る」と言って、問題提起することも多々ありました。ところが蔡英文政権に誕生すると、明らかな親米親日路線に変更されたわけです。

藤井:はい。

林:蔡英文は口では決して反中とは言いませんが、実際にやっていることは反中路線そのものです。2019年の香港民主化デモの鎮圧やウイグルの弾圧を見て、台湾は当然ながら反中路線に傾きました。そのときの反中路線というのは政府だけではなく、台湾の国民全体のコンセンサスだったと思います。一方、そのときの国民党は党の財産が底を突き、冷静な判断ができなくなったと言えるかもしれません。

藤井:あー。それが内実なんですか。

林:そうです。

藤井:かつては世界ナンバーワンの金持ち政党とも言われた国民党ですが、その時点でお金が底を突いてしまったということですか。

林:そうです。そのときから中国共産党に養ってもらうような政党に成り下がってしまったわけです。

藤井:なるほど。第3次国共合作のときよりも、今や国民党は中国共産党の台湾支部といった性格を色濃くしているような感じですか。

林:そうです。共産党の妾になってしまったということです。

藤井:なるほど。

林:金が1度でも注入されると、党は支持者を含め、中国マネーにどっぷりと依存していくことになります。そうなれば、もはや反中という考えはあり得ないでしょう。国民党の総統候補は中国共産党のお墨付きがなければ、実際に出馬できないというようなことになっていくと思われます。

藤井:国民党はそこまで来ちゃったわけですか。

林:そうです。

藤井:なるほど。国民党が台湾人をひどい目に遭わせてきたことは事実ですが、一つだけ良かったことを取り上げるとすれば、それはやはり中国共産党と戦ったということです。共産党と妥協したこともありますが、戦ったこともあるわけで、それこそが国民党の最大の功績じゃないかと私は考えています。台湾に渡ってきた蒋介石は共産主義と対峙するという一線は守っていた。そこで安易な妥協は決してしなかった。そういう反共主義というような党是もなくなってしまうということですね。

林:反共産主義は、そもそも革新的な思想です。

藤井:それを取り除いてしまったら、国民党の核が消滅してしまうじゃないですか。

林:そうですね。国民党はこれから利益だけで動きます。利益ということであれば、当然ながら利益の大きいほうに買収されてしまいます。まったく複雑ではなく、非常に単純な構図ではないでしょうか。

藤井:なるほど。

林:2005年に連戦は国民党主席として中国を訪問しました。そのときに胡錦涛といろいろな合意を結び、中国マネーを受け取ることになり、国民党はもう完全に狂ってしまいました。連戦の家族は今でも中国に莫大な利益があります。ああいうお金は袋に包んであげるというものではなく、特許事業や専売事業などの利権を中国に与えてもらうということです。連戦ファミリーは中国で病院を開業するなど、医療関係の事業を拡大していきました。あれだけの人数がいるわけですから、医療関係の利益というのは膨大なものになります。この利益が連戦の家族に流れ、ファミリーは潤いました。

藤井:なるほど。

林:国民党の党内構造は中国共産党のそれとまったく同じような仕組みになっていて、党代表から党の中央委員が選ばれ、中央委員から政治局員が選ばれ、政治局員から常務委員が選ばれるという流れになっています。そして国民党には常務委員が31名いますが、その全員が中国と何らかの商売をやっています。

藤井:あー。中国共産党の汚染がもう完璧に国民党の党内に浸透してしまったということですか。

林:そうです。

藤井:31名全員にチャイナ汚染、共産党汚染が広がったということですね。

林:全員ですよ。国民党の現主席の朱立倫(シュリツリン)ですが、彼の奥さんのお父さんと奥さんの弟、つまり朱立倫の義父と義弟は中国と商売で繋がっています。中国での商売は中国共産党のバックがあれば、どんな事業でも儲かると言っていいでしょう。しかも普通の儲けではなく、巨額の儲けになるわけですから、当然ながら共産党に頭が上がらない。その意味で、今回の選挙でも国民党から出た候補者は例外なく、親中派の政治家ばかりでした。親中イコール反米です。なぜなら今まさに米中対決時代だからです。一方、蔡英文が初めて総統選に出馬したのは2012年ですが、当時のアメリカは中国と上手くやっていこうという考えを持っていて、蔡英文に反対の立場を取っていました。このとき馬英九に敗北しています。ところが蔡英文はその後、朱立倫と戦った2016年の総統選で当選すると、さらに2020年の総統選でも元高雄市長の韓国瑜(カンコクユ)に勝利しました。韓国瑜は100%、中国の意中の人物です。要するに国民党から出馬する候補者は、いずれも中国に選ばれた人物だったということが言えるかと思います。韓国瑜は2019年3月22日、総統候補として香港を訪問しています。そのとき彼が香港の中央連絡弁公室に入っていくところがキャッチされました。中央連絡弁公室とは何かというと、香港の行政長官を監視する中国政府の出先機関です。要するに中国の意向を受けて香港を統括する機関が現地にあって、そこの主任である王志民(オウシミン)と韓国瑜は総統選前に会っていたということです。王志民から何らかの指示を受けてきたか、あるいは次期台湾総統としての面接を受けてきたか、どちらかでしょう。この行動は台湾に戻ってから物凄い批判を浴びました。

藤井:なるほど。

林:そして2023年4月20日、国民党の最有力候補である侯友宜(コウユウギ)はシンガポールを訪れ、2015年に習近平と馬英九が会談したシャングリラホテルに泊まりました。実は侯友宜のシンガポール訪問は19日に突然決まったもので、その日のうちに彼はシンガポールに向かっています。そして翌朝から予定を入れるわけでもなく、20日の12時までホテルにずっと滞在していました。ちょうどその時間帯に中国の駐シンガポール大使の孫海燕(ソンカイエン)がシャングリラホテルに入っていくのをマスコミに撮られています。

藤井:おー。なるほど。

林:侯友宜は「孫海燕に会っていない」と言っていますが、誰が信じるのでしょうか。予定を入れず、その時間帯に孫海燕がわざわざ侯友宜の泊っているホテルに偶然に入っていくことがあり得るでしょうか。僕は信じられません。そうなると、侯友宜はやっぱり面接を受けていたのではないかという疑惑が浮上します。あるいは何らかの指示を受けていたかもしれない。今の国民党の候補は中国の操り人形になっていますから、そのぐらいのことは容易に想像できますよ。

藤井:実際に共産党が国民党の候補を選んでいるということですか。

林:そうです。

藤井:先ほどの話にもありましたが、連戦の時代から裏のお金を通じた買収、巨額賄賂の仕組みがあったということですよね。

林:そうです。それだけではなく、実際にはそれ以前からそういう仕組みは存在していました。共産党が国民党の下部組織に入り込み、里長を買収するということがたびたびありました。里は台湾では最も末端の行政組織で、里長は村長みたいなものです。その里長を中国に招待して、タダで食ったり遊んだりさせて、いろんなお土産を持たせて、いろんな利益をあげるということが以前から行なわれてきました。宗教団体に対しても同じようなことが行なわれています。習近平政権以降、その部分をさらに強化しようという動きすら見受けられました。

藤井:共産党は末端の行政責任者を招いて、そういう買収工作をまめにずっとやってきたわけですか。

林:はい。

藤井:だから、そういう人たちが選挙のときに国民党を支援するわけですか。

林:そうです。しかも台湾の選挙には日本人が想像できないほどの金が乱れ飛んでいます。さらに票の買収もいまだに存在しています。国民党がそのような選挙戦を戦うには中国マネーがないともはや難しいでしょう。

藤井:米中との等距離外交はかつて可能だったと思いますが、今や完全にそうじゃなくなっているということですか。

林:そうです。

藤井:だいぶ前の話ですが、日本には竹下登という親中派の政治家がいました。彼は田中角栄の子分で、その時代はアメリカともチャイナとも仲良くするというのが通用する時代でした。クリントン時代のアメリカはチャイナ利権に深く食い込んでいましたから、米中の対立構造がはっきりしていなかった時代にはそういう外交も許容されていたと思います。しかしながら今や絶対に不可能でしょう。

林:米中対決時代に等距離外交なんて不可能に決まっています。

藤井:韓国の朴槿恵(パククネ)さんはそういう認識がまったく分かっていなかったような感じがします。

林:そうですね。朴槿恵さんは保守派でありながら、結局は中国接近という路線に切り替えました。

藤井:そうそう。さらに彼女は反日にどんどん傾いていきました。

林:そうですね。

藤井:話は変わってしまいますが、朴槿恵が大統領になろうかというときに産経新聞なんかも「父親の朴正煕(パクチョンヒ)の時代のように親日的になるんじゃないか」というような記事を書いたわけです。私なんかは当時を見ていて、それは絶対にあり得ないと思っていました。朴正煕(パクチョンヒ)が親日だったかどうかという点については疑問に感じていて、彼は日本の教育を受けた元日本軍人というだけであって、韓国国内ではしっかりと反日教育をやっていました。だから李登輝先生やその世代の台湾の人たちとはまったく違います。だからこそ、私は朴槿恵が反日に傾倒していくことは最初から予想していました。さらに彼女は親中です。米中の関係が悪いのに、米中両国と仲良くしようとするから、朴槿恵の外交はガタガタになっていきました。そこら辺から米中対決構造は水面下で着実に進んでいたので、それが理解できなかった朴槿恵さんは相当なバカだと思います。

林:かつて小沢一郎も日米中正三角形論を唱えました。それは絶対にあり得ない考え方です。僕の息子が、僕と隣のおじさんを等距離外交で正三角形の関係にもっていくと言っているのに等しい。ましてや日本が正三角形の関係を言い出すとき、これは絶対に信用できないと思いました。等距離外交は理論的に不可能だと僕は思っています。日本とアメリカの関係を考える場合、正三角形の関係は基本的に不可能です。台湾も、韓国も不可能でしょう。なぜなら安全保障の部分をアメリカに依存しておきながら、等距離外交なんかあり得ないじゃないですか。

登録は簡単3ステップ
過去の配信動画が見放題
最新情報をお届け

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

月間ランキング

  1. 1

    秦剛解任の裏

  2. 2

    中国外交部の異変

  3. 3

    日経の大罪

  4. 4

    バイデン政権の対中ゾンビ外交

  5. 5

    「農管」・ヤクザ顔負けの中国農業警察

  6. 6

    安倍晋三のパンチ

  7. 7

    ワグナル反乱で震え上がる習近平

  8. 8

    台湾問題を国際化する習近平

  9. 9

    真実と嘘を織り交ぜたペテン師の手法

  10. 10

    大人の情報学

Taiwan Voice

Taiwan Voice

日米台研究所理事・林建良先生と国際政治学者・藤井厳喜先生による、台湾の視点から、最新の国際情勢を分析・解説した動画が届く会員制のサービスです。大手メディアが報じないため、実態の分からない中国情勢の分析を月1回、実例を上げながら分かりやすくお届けします。

最近の記事

  1. 秦剛解任の裏

  2. バイデン政権の対中ゾンビ外交

  3. 中国外交部の異変

TOP