台湾新内閣・陳建仁行政院長は民進党の劣勢を挽回できるか?

台湾

1月27日に蔡英文総統は内閣改造を発表しました。内閣改造の一番主な人事は、これからの行政院長、つまり首相です。陳建仁・元副総統に交代させる。そして行政副院長、つまり副首相は鄭文燦・前桃園市長に交代させるということ。この内閣改造は一体どんな意味があるのか。ご承知のとおり、昨年の11月26日の統一地方選挙で民進党は大敗しました。大敗した理由はいろいろありますが、一番最大の理由は内部の内輪揉めです。あまり団結できていなかったことが一番の理由です。しかしその後の反省やいろいろな問題も持ち出されて、結局は責任政治、内閣は内政の一番の責任者だということで、やはり内閣を改造しなければいけないという声がかなり高まってきました。実はその前の蘇貞昌内閣はこの4年間にいろいろないいことをやってきて、かなりの業績を上げたにもかかわらず、一応選挙で負けた責任を取らざるを得ないということで、総辞職しました。結局政治の現場とは必ずしも理性的判断ではなく、特に民主主義の政治というのは多数決です。多数決イコール正確な判断とは言えないですが、責任政治という意味で、責任を取って辞任するというのが、今までの台湾の慣例でもあります。蘇貞昌行政院長は11月26日の選挙が大敗と分かった時点で、辞意を表明し、それから何度も蔡英文総統に責任を取って辞めたいと申し入れをしていました。かなり意志が強かったようで、ここにきてやはり交代せざるを得ないということで、内閣改造に踏み切ったわけです。台湾ボイスで何度も強調していますが、何をやるのか、1つの内閣、政権ですね。まず一番大切なのは彼らの言葉ではなく、彼らの人事を見ることです。

人事とは何か。こういうところでこういうことをやりたい、ある場所に行きたいという時、人事とは車です。例えばこれからデートしたい。デートしたいなら、車を用意しなければならない。車を用意すれば、可愛い彼女を連れてドライブに行きたい。しかし用意してきた車が軽トラックでは、ちょっと格好悪い。やっぱり可愛い彼女を連れてドライブをするなら、軽トラックではなくてスポーツカーの方がふさわしいです。同じ2シーターですけれども、軽トラックよりはスポーツカーの方がデートの成功する確率が高いわけです。逆にこれから農作業をする場合、軽トラックではなくて、スポーツカーに乗ってきたとする。同じ2シーターでいいんじゃないかということで。しかし農作業をする際には、軽トラックの方がいいでしょう。それと同じように、これからこれをやりたい、と口で言うよりは、どのような人事を出しているか。それが一番大切です。蔡英文総統の位置付けとしては「温暖堅靭(おんだんけんじん)内閣」といいます。温暖堅靭内閣とはどういう意味か。温かみのある、かつ強靭な政権ということです。温かみのある、かつ強靭な内閣を作りたいということです。もし、これが蔡英文総統の強い意志であれば、もちろんこれにふさわしい人事を用意しなければいけない。ではこの2人は果たしてふさわしい人事なのか。陳建仁・元副総統は今年71歳ですが、彼は政治家というよりは学者、あるいは宗教家です。彼は非常に温厚な人間で、いつもにこにこしています。民主主義では多数の人間に支持されなければいけないので、当然にこにこした方がいいんでしょう。しかしながら、にこにこしている政治家は、台湾でも日本でも割と少ない。台湾では政治家はだいたいみんな厳しい表情をしています。日本の政治家も、安倍晋三さんは常ににこにこしていましたが、それ以外の政治家でにこにこしているのは少ないです。しかし陳建仁は実は政治的手腕は未知数です。なぜかというと、彼は世界的に有名な公衆衛生の学者です。しかも彼は実は台湾では最高ランク、学術界では一番名誉のあるポストに就いているんです。どういうポストかというと、彼は中央研究院の院士でもあるんです。しかも台湾だけではなくて、アメリカの国家科学院の院士でもあります。つまり世界的に有名な学者なんです。

彼の専門分野というのは公衆衛生、特に疫病です。実は2003年の時に中国から渡って来たSARSによって、非常にかなりの被害を被りました。その時のSARSの致死率は今回のコロナよりはるかに高かったわけです。台湾もかなりの死者が出ました。その時は、誰もこのSARSに関する経験がありませんでした。彼はその当時、水扁政権だった2013年の時、SARSの対策のために、陳水扁政権の要請を受けて衛生署長というポストに就きました。それが彼が初めて政治の世界に入った時です。衛生署長というのは、日本でいえば厚生省の厚生大臣に相当するポストです。その後、陳水扁政権の中で、彼は国家科学委員会、つまり科学を発展させるための委員会の委員長に就任し、2016年は蔡英文総統と一緒に組んで総統選に臨んで当選しました。そして彼は4年間だけ副総統のポストに就きました。一応この3つのポストは政治というよりは学術です。基本的には副総統というのは名誉職のようなポストで、何の権限もありません。だから政治の世界では素人に近いような感じです。だけれども、彼はいつもにこにこしていて、非常に敬虔なクリスチャン、カトリック教徒で、ある意味、学者、宗教家というイメージが強かったんです。かなり温厚なタイプです。だから政界では基本的にはほぼ敵が存在していないという感じです。

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