全面的に台湾を守る台湾政策法

台湾

A:藤井厳喜様
B:林建良様

A:それではCセクションに行きたいと思います。全面的に台湾を守る台湾政策法(Taiwan policy act)ということで、この中身の台湾防衛に関するアメリカのコミットメントについて、詳しくご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

B:実はこの台湾政策の改訂版は156ページあるのですが、かなり分厚い法案です。例えば、台湾関係法は全文が非常に薄くなっています。内容はそれほど多くはありません。法案というものは、別に内容が多いからと良いというものではないのですが、条文が少なければ少ないほど裁量権が大きいわけです。法律の例えば2条・3条が今度、行政当局は自分の解釈の権限が多くなります。細ければ細かいほど裁量権が少ないということです。裁量権が少ないと、政権が変わっても、誰が担当しても同じようにやらないといけません。例えば、日本の道路交通法の場合で言うと、赤信号になったら止まらないといけないということで、政権が代わったからといって、新しい政権が今度から赤信号で止まらなくていいということにはならないです。この規定が細ければ細かいほど、行政当局の裁量によって勝手に解釈することは許されません。この台湾政策法の分量からすれば、台湾関係法の何十倍もある分量になっていて、僕は今、何度も読み返しています。僕は普段であれば本は1度読めば終わりで、何回も読み返すのはラブレターだけです。ラブレター以外で何度も読み返しているのは台湾政策だけです。なぜ何度も読み返しているかというと、アメリカから台湾へのラブレターのようなものだからです。それは愛情がいっぱい詰まった156ページの長いラブレターです。その長いラブレターを何回読んでも全く苦にならなりません。読めば読むほど、アメリカからの愛情を感じるようになるのです。その中に実は今回の台湾政策法の先ほど申し上げた、台湾の自決権あるいは台湾の地位問題なども非常に大切な部分ですが、もう一つの大切な部分である台湾の安全保障に関する面は物凄く細かく規定してあります。

それがどのくらい細かいかというと、アメリカと台湾の軍人のことや武器をお互いに操作できるようにするとか、非常に細かく規定しているのです。あるいは台湾のアメリカの政府関係者は台湾に留学して、1年目で何をして2年目は何をするとか、台湾の政府の中でインターンとしてどのように勉強するか、そしてアメリカに帰ってからまた何年か政府機関で仕事しないといけないとか、非常に細かく規定しているわけです。しかも、金額の面も細かく規定しています。そこまで細かく規定する法律になったら、恐らく将来アメリカの政権は確実に実行しないといけません。その中で安全保障の問題の面にとって大切な部分は、台湾関係法の改定に触れたことです。つまり台湾関係法では不十分だから、その改定の部分の1番大切な部分はどういうものなのでしょうか。台湾関係法で台湾の防衛に関する部分は「Self-defense Capability」という、自分の防衛能力を維持するだけです。つまり専守防衛であり、相手に攻撃してはいけません。しかし実際は、攻撃こそ最大の防御という言葉もあるくらい、防衛するだけで攻撃は絶対に許されないと言うのであれば、完全な防衛とも言えないのです。今までのアメリカの場合は例えば、台湾から中国まで届くような武器は絶対に売ってくれませんでした。台湾に対して上空での停留時間や飛行距離の長い飛行機は売ってくれないのです。また、空中の給油機も売ってくれないわけですから、台湾が絶対中国に手を出させないような防衛体制だと言えます。例えば、ボクシングの試合で言えば、自分がガードするだけで、絶対に反撃できないような試合です。最初から台湾が絶対に勝てないような体制になっています。それが「Self-defense Capability」です。言葉としては専守防衛という、いいように聞こえるのですけれども、実は非常に不公平な体制になっています。

アメリカ政府の思考として例えば、今回のウクライナとロシアとの戦争もそうですけど、ロシアが明確にウクライナの領土の中に踏み込んでいるのに、ウクライナが絶対ロシアの領土に攻撃してはいけないという制限を科しているわけです。そうなると、ウクライナは不利な状態で戦わないといけないということですけど、ロシア兵からすれば、自分の領土に一旦帰ると絶対攻撃される心配がないということですから、補給ラインにしてもウクライナの中に入らなければ攻撃されないで済みます。それは非常に不公平な状態でウクライナばかり攻撃されているわけですから、どんな場所でも攻撃されるのですけど、ロシア側にとって絶対に攻撃されない部分があるということで、台湾と中国との関係も同様です。アメリカ政府の思考はこのようになっていますが、完全な防衛とは言えません。完全な防衛として今回、台湾政策法で台湾関係法のこの部分を削除して、今度は人民解放軍に対するDeny & Deterということです。Deny=拒否であり、どんなに攻めてきても絶対撃退できるような能力、もしくは体制を意味しています。Denyという能力があればDeter=抑止力が発生するわけです。絶対に相手を撃退できないような武器であれば、抑止力にはなりません。自分ばかり撃たれて反撃できないと、向こうは安心して攻撃してくるわけですから相手を撃退して負かせるような能力があれば、抑止力が発生します。だからDeny/Deter/Defeatというのは三位一体です。相手を撃退する、相手を負かすことの能力がない場合は抑止力にもならないし、自衛にもなりません。自衛にもならない武器は相手の機嫌によって、機嫌が悪くなったら攻撃してくるとか、機嫌が良くなったら平和になるのですけど、常に戦々恐々な状態になるのです。これは非常に不公平で、しかも、非常に不安定な状態になります。だから、台湾政策法というのはDeny & Deterという言葉をちゃんと入れました。要するにPLA=人民解放軍を拒否できる、つまり接近してきたら必ず撃退することによって抑止力が発生します。だから、台湾に売る武器は今まで長距離の武器や精密兵器は絶対売ってくれないのですが、今回この台湾政策法の中で長距離、精密兵器を必ず台湾に供給するようにという文言も入っているわけです。

ここが一つの非常に大きな転換だと言えます。つまり、今まで台湾側が中国を攻撃することが許されなかったのですが、これから台湾側から中国に攻撃できるような体制になるというのが台湾政策法です。これは、非常に大きな姿勢変化ですが、もちろんこれはこの法律にはなっていません。ただし、上院がこのような法案を出すということは、少なくとも上院の中で一定のコンセンサスがあり、これがやっぱり問題だということです。つまり専守防衛は防衛になりません。日本にも専守防衛を強いられているのですけど、台湾にも専守防衛を強いられていますが、専守防衛は決して防衛にはなることもなく、抑止力にもなりません。これからはSelf-defenseからDeny & Deterになっていくということが今回の台湾政策法の中でちゃんと明記されています。僕からすれば、この文言を何度も読んで物凄く感動しているのです。台湾人としては非常に嬉しく思います。つまり、やっと台湾の中国攻撃が許されるようになったのです。中国は実は攻撃に弱いということがわかっています。中国の沿海地域は、仮に台湾が攻める戦略に転じれば、中国は非常に自分の国を守りにくい地形です。なぜなら、中国の沿海地域は中国の経済として1番発達している部分だからです。中国のGDPは3分の2以上が沿海地域にある上海、浙江省、福建省、広東省など、1番発達している部分が全て平地にあります。上空や海上からのミサイルにしても、あるいは台湾の陸上からのミサイルにしても、彼らがミサイル防衛としては非常に貧弱です。なぜなら彼らは今まで中国の数千年の概念として、敵は北にありという概念だったからということが言えます。だから、万里の長城はその象徴なのです。敵は北からやってくるということで、万里の長城は、北からの敵を防ぐために作ったものでした。しかし、海から敵がやってくるという発想がありません。海からやってくるのは、明の時代から秦の時代までの倭寇(日本人海賊)だったのです。倭寇は盗賊集団ということでちょっとした嫌がらせ、国としての侵略ということにはならないし、国家としての安定にも関係ありません。だから、海からの敵を中国は意識してないわけです。だから、中国が海からの敵をどうやって防ぐかというと、防ぐ概念がなく、明の時代にしても秦の時代にしても、自分の国民が海の近くに住まないようにするだけでした。あるいは海に出ないようにする禁海令というものもあったわけですから、この中国の軍事思想が今でも残っています。今の中国海軍の軍艦はアメリカよりも多くなりましたが、その海軍力は数だけ多くて実際の戦力は決して強くありません。

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